たった一人の甘々王子さま
10 ヤキモチ再び


浩司と優樹が日本を離れて3ヶ月。
お互いに仕事と勉強があるのだから忙しい日々を送っていた。


二人の住むマンションは2LDK。
1つは寝室として使うので、もう1つの部屋は浩司の仕事部屋にした。
優樹の勉強するスペースはもっぱらリビング。
帰宅時間の遅い浩司と少しでも一緒にいたくて、ここで勉強しながら待っているのだ。


二人にも休日は、ある。
しかし、浩司は急な会議で出勤になったり、優樹も留学しているのだから追加レポートの作成だったり........と、ゆっくりする時間は少な目。
本当に日本にいるときと何ら変わらない生活。



そんなある日。


「優樹?ちょっといい?」


朝食の準備をしていた優樹のところにシャワーを浴びた浩司が顔を出す。


「ん?なに?もうすぐ食べられるよ。」


目玉焼きを作っている優樹はお皿に盛り付けながら答える。
毎日キッチンに立つようになって、優樹の腕前も上達した。それなりに。


今朝のメニューはベーコンエッグとサラダとトーストは......もうすぐ出来上がる。
初めはベーコンは焦がすわ卵の黄身は割るわで大惨事だった。


『あとは....』と、二人の好きなイチゴジャムを準備してテーブルの上に。
最後にコーヒーを。


「浩司、お待たせ。なんだった?」


先に椅子に座っていた浩司に声をかけると、優樹も隣に座る。


「あのさ、今度の休みなんだけど........」


浩司が歯切れの悪い物言いをする。
こんなときは、大抵、優樹の嬉しくないことだと分かる。
もう何回かこの手で外に連れ出された。
優樹も『ふぅ』と、溜め息も出る。


「なに?またパーティー?ホントにこっちの人は大好きなんだね~」


ちょっと嫌味も込めて答える。
すると、申し訳なさそうな浩司が


「優樹、これも大切な仕事なんだよ?各界の方々との繋がりを得るためで........」


「わかってるから説明はいいよ。浩司の大変さも理解してる。だから、此方に付いてきたんだし。」


優樹は浩司の言葉を遮る。


「優樹、ダメかい?」


すかさず浩司からのお伺い。
優樹も別に出たくないわけではないのだが......


「浩司が、綺麗なおねーさんに囲まれて、おっきなおっきな胸押し付けられて、くっさい香水擦り付けられて、無駄にモテてるの見たくないんだけどな。フン!」


そう言って、優樹はトーストをがぶりと食べる。ムッシャムッシャさせながらサラダも食べる。


そう、優樹はパーティーできれいに着飾ったご婦人たちに囲まれる浩司が見たくないのだ。
まぁ、ただのヤキモチ。


「俺が好きなのは優樹だけだって言ってるのに?」


隣に座る浩司は椅子に跨がる形に座り直し、そっと優樹の腰に腕を回し引き寄せる。
座っている椅子がベンチタイプだからできる技。
自分の胸に優樹の頭を凭れさせ撫でてご機嫌取りをする。


「浩司のことを好きなのも、おっきな胸の綺麗なおねーさんだよ?フン!」


そんな抱き締めに動じず、朝から優樹のヤキモチが始まる。
もちろん、トーストもムッシャムッシャ食べ続ける。


『優樹のヤキモチは本当に可愛い。』
と、思う浩司。


「優樹、お願いだから。それに、俺の好きな胸はコレだからね。」


浩司は、自身の腕の中で拗ねながら食事をする優樹の可愛い胸を揉み始める。
もちろん、服の中に手を滑り込ませて。
あっという間にブラもずらされて、浩司の両手が代わりに包む。
意地悪な指先は優樹の先端にも刺激を与える。


「ンッ......揉むな、エロ大王。いま、食事中だし。ヤッ........ヤダって言っても連れて行くくせに......」


「よくお分かりで。ドレスとかの手配はこっちで済ませておくからね。あ、いつものことだけど『お守り』忘れないでよ?」


浩司の言う『お守り』とは、指輪のこと。
ペアリングと婚約指輪。



婚約指輪は日本を発つときに受け取った。
それも、出発ロビーで。


『優樹のこと、今以上に大切にする。これからも俺の傍で笑っていてね。』


『うん。ありがと、浩司』


そう言って、優樹から『ぎゅ』って抱き締めたのだ。
耳元で「大好き....」と囁きながら。

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