たった一人の甘々王子さま


週末。
エリーの父親主催のパーティーの日。


朝から、浩司とドレスアップのための準備でホテルで軟禁状態。
此処で全ての準備ができるので便利なのだ。


「エステと美容室って、美容室はわかるよ。何でエステが必要なの?意味分かんない!たった一晩のためにもったいなぁ~」


エステスタッフに囲まれた優樹は隣で支払う浩司に文句をいう。
毎回、パーティーがある度に連れてこられて嫌になったようだ。


「今よりも更に女性らしくなった優樹が見たいの。俺のために頑張ってきてよ。」


「えー?おねーさんの手で揉みくちゃにされるんだよ?痛いもん。もうヤダ。」


エステなんてよの女性には憧れるものなのに、優樹にはお気に召さないようだ。
しかし、終わったあとは肌がすべすべして気持ち良くて優樹自身も驚いて納得はするのだが........


「優樹がエステした後の肌って、とても気持ちいいんだよね。いつまでも触っていたいくらい。俺、結構好き。」


優樹の耳元で優しく甘いことばを呟く。
心地よい低い声は優樹にとって反則だ。
メイクする前なのに優樹の頬は赤くなる。


「や、やればいいんでしょ?仕方ないなぁ~ちゃんと待っててよ?」


同意した優樹はスタッフに連れられて奥の部屋へ。


「楽しみに待ってるよ。」


笑顔で見送る浩司は受付でコーヒータイム。持参した本を手に暫しの読書タイム。
と、そこへ


「あ、ユーキのダーリン発見!」


元気な可愛らしい声が浩司の耳に届く。
振り向けば、優樹の留学して初めて出来た友達のエリーがいた。


浩司は此方に来てすぐの頃、エドワードとの食事会の時、エリーの事も紹介されていたのだ。


優樹はまだエリーの父親との面識はない。
今回のパーティーが初めての顔合わせになる。


「ユーキはもう中に入ったのかしら?」


辺りをキョロキョロ見渡すエリー。


「えぇ、今はエステ室でそのあとメイクですね。エリーは?」


「私も此処でお願いするの。ユーキも居るって聞いたからね。ちょっとパパにお願いしちゃった。」


『テヘッ!』と、可愛らしく下を出して答えるエリー。


エリーは背格好は優樹と変わりない。
どちらかというと、エリーの方が背が高く細身で肌の色も白い。
髪はロングで艶のあるブラウン。
シャンプーのコマーシャルにでも出ればいいと思うくらい。


「エリー、受付の方がお待ちですよ?それに、貴女が綺麗になるのを楽しみにしている殿方がお待ちなのでは?」


視線の先で待っているスタッフが困った顔をしているので浩司はエリーを促した。


「あら、ごめんなさい。じゃあ、行ってくるわ。ユーキともお喋りしたいし。」


『またあとでね。』と、エリーは去っていく。


「さっぱりした態度は優樹に通じるものがあるのかな?」


なんて、分析してみる。
まぁ、浩司にしてみれば女性の友達が出来る分には何ら問題ないのだ。


「こっちで出来た優樹の女友達、エリーしか聞いてないかも........もしかして、怪しいか?」


ちょっと不安がよぎる浩司だった。


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