たった一人の甘々王子さま
メイクアップ&フィッティングルームにて。
優樹はエステが終わり、衣装決めの段階。
ある程度、スタッフにより候補が決めてあるのだが........
「ユーキ、今回はこちらの女性らしさよりも可愛らしさをアピールした衣装はどうかしら?」
「スリムなロングドレスは前回着たでしょ?」
「エクステもつけて、いつものカッコよさをひっくり返して、ね?パートナーを驚かせましょうよ!」
毎回、パーティーの度にこちらでお世話になっているからなのか、慣れ親しみ、とてもお客様扱いではない。
優樹はもう、きせかえ人形だ。
「えっと、そんなにミニスカートは履いたことないよ?」
優樹が口を出せば、
「ちょっとユーキ!膝丈のドレスをミニなんていってはダメよ!ミニっていうのはね......」
と、スタッフの一人が制服のタイとスカートを持ち上げて自身の太股を見せる。
「これくらいよ?分かったかしら?」
「わ、わかった!もう戻して!」
何故か顔を赤らめる優樹。
男子中学生か?
「さ、ユーキ。私の好みも入っているけど、今回はこちらでどう?可愛らしさをアピールしたドレスで。」
そのスタッフ、メグの選んだドレスは膝丈のフレアードレス。
胸元が大きめに開いているのでアクセサリーが映えそうだ。
ノースリーブだが、ショールもあるので肌の露出も控えられる。
「こんな可愛いの着たことないよ?きっと似合わないんじゃ........それに、胸小さいしさ。」
「あら、心配なのはバストなの?それくらいなら何とでもなるわよ!こっちいらっしゃい。私がかわいく仕上げてあげるわ。」
メグがやる気を出して、気の乗らない優樹を更衣室につれていく。
「さあ、ユーキ。まずこの下着をつけて、そらからドレスね。今回は素足でいくから下は履かないでね。」
と、パンストを指差す。
「じゃ、ドア閉めるわね。ダーリンはあっちの扉の向こうでコーヒー飲んでるから着替えたら呼んであげるわ。」
メグは数メートル先のドアを指差し手をヒラヒラさせながら更衣室のドアを閉めた。
「こんなドレス、可愛すぎだよね?自分にほんとに似合うの?」
姿見の前にたち、全身を鏡で見る。そして、ドレスを前に宛がう。首をかしげるか、普段のファッションなんてスポーティーなものばかりなのでドレスの知識なんであるわけない。
「こうしてても仕方ないな。取り合えず、下着から着て......で、ドレスか。」
優樹は壁にドレスをかけて、バスローブを脱ぎ、指定された下着をつけていく。
「うっわ、パット分厚い!こんなのあるんだ。すげー、これ詐欺だな......」
補整下着なるものをつける優樹。
だが、初めてのことで戸惑う。
「これ、きっつぅ......。おっ?そのお陰で谷間が出来た......。メグのくれた下着スゴーイ......」
寄せて上げた胸を支えるパットのお陰で優樹の胸がいつもの倍。いや、それ以上かも。
「浩司の周りに群がるおっきな胸のおねーさんみたいだ......ほんとスゴーイ。」
鏡に映る自分を見つめる。
左右に身体を回しながら。
一通り確認して納得したのかドレスに袖を通す。
まず、背中のチャックを下げて、ドレスを跨ぎ上に持ち上げて両腕を通す。
頑張って手を回し、背中のチャックを上げたところで......
『バチン!!!』
と、大きな音がした。
同時に部屋が薄暗くなる。