たった一人の甘々王子さま


「ところでコージ、挨拶回りはもういいの?社長と一緒にいたのだろう?」


トムがさりげなく会話を切り替える。
エリーもそれに便乗する。


「そうよ、パパと一緒に挨拶回りに行くって言ってたわ。もういいの?」


「エリーの護衛が彼氏のせいで役に立たなくなったから戻ったまでだ。エドは向こうで待っていてくれてるよ。」


浩司は冷たい視線で、優樹を手放すこともなく、エリーとトムには顎でエドの現在地を知らせる。


「折角エドが開催してくれたんだ。無下にはしないよ。ちゃんとモノにしてみせる。さ、優樹一緒に行こう。」


そう言って、連れ出そうとする。
たが、料理を食べていた優樹は


「え?ちょっと待って!エリーと美味しい料理食べていたのに..........もう食べちゃ駄目なの?」


「いや、食べていいよ。だけど、少し付き合って。向こうでエドが待ってる。」


浩司が優樹の身体をエドのいる方へ向ける。『ほら、あそこにいるよ。』って指差して。


「わかった。一緒にいく。だけど、浩司ちょっと....」


優樹が手招きすると浩司が身を屈めてくれる。


「ショウの事、ちょっと怖かったから........助けに来てくれてありがとね。」


なんて、可愛く言うものだから浩司の理性も亀裂が走る。


「優樹、そんなに可愛いいと今夜、大変だよ?」


なんて、脅してみたり。


「大丈夫。可愛いじゃなくてカッコよくなるから。」


こちらも防御を覚えたようで。


『さぁ、行くよ?』と、促されてまた挨拶回りに。


「エリー、ごめん。ちょっと行ってくる。」


「はいはい。行ってらっしゃい。」



エリーはトムに寄り添いながら手を振って見送る。
人だかりの中に二人が消えると


「ショウ、冗談半分なら止めてよね。此方の心臓が持たないわ。」


エリーがすかさず釘を指す。
トムも、頷く。


そんな言葉など聞こえていないのか、ウェイターからシャンパンを受け取り一気に飲み干す。


「プハッ........彼女は日本に行ったときに見つけたんだよ。まさか、田所コーポレーションのお嬢様とは。そして、婚約者もいたなんてね。」


「ショウから好きになる子の殆どが相手がいるところからのスタート......。だけど、今回は今までの相手とは全く違う。挑まない方が得策よ。」


エリーがそう言葉をかけても、如何に優樹を手にいれようかそちらの案を捻り出そうと悩み始める。


「男の方がベタ惚れなんだろ?だったら可能性あるんじゃないか?日本で見掛けたとき、もっと男勝りの感じだったけど、あそこまで化けるとはね。隣に立たせるなら申し分ないよな。」


流石のエリーもそれにはお怒りモード。


「ショウ!ユーキは私の大事な親友なの。傷つけたら容赦しないわよ?」


『今回は諦めなさい!』なんてエリーの言葉はショウの耳に届かない。トムが制止するほどヒートアップ。


「エリー、ここパーティー会場だからね?分かってる?」


トムがエリーを抱き寄せて包み込み、落ち着かせようと囁く。それでもエリーは興奮覚めやまない。


「だけどね、今回のショウは本当にやめてほしいのよ!トムもそうでしょ?ユーキの悲しむ所なんて見たくないわ。」


『だから絶対に手出ししないで!』最後にその言葉を伝えてエリーはトムの手を引いて会場の外へと出ていった。


シンと静まり返ったショウの回りは何事もなかったかのようにパーティーの賑やかな音と人の声が聞こえ始める。


ショウの視線は人混みの中。
もちろん優樹をさがしている。
背の高い二人でもここの地では日本とは違い皆それなりに高いのですぐに見つけられない。
ショウも見つけにくいかと思ったが、そこは思い人。オーラが違うのか、すぐに見つかる。


「諦めることが出来たら、もうとっくに次の獲物見つけてるよ。エリーには悪いけど、今回はそう簡単に諦めるつもりはないよ。男慣れしていない子なんて、どう料理しようか..........」


『楽しみだな。』なんて囁きながら優樹を見つめ、ショウも会場を後にする。


その時、ショウの視線が優樹に向いているのを気づかない浩司ではない。


笑顔で挨拶をしながら、相手側の人混みの隙間を縫ってショウの動きを見ている。
浩司のヤキモチセンサーでも働いたのだろうか。


浩司のヤキモチ、再び発動?

< 125 / 187 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop