たった一人の甘々王子さま
「ユーキ!!いらっしゃい、寒かったでしょ?さぁ、入って。ダーリンもね。」
エリーの家のクリスマスパーティー当日。
優樹は浩司と共にワインを持ってやって来た。
エリーとトムが出迎えてくれてエドの待っているリビングへと足を運ぶ。
扉を開けるとエドは笑顔でソファーに座っていた。
「やぁ、二人とも。よく来てくれたね。今夜は楽しんでいってくれよ?」
二人に気づくと立ち上がって、握手を交わす。
「エド、お招きいただき感謝します。これ、お口に合うと良いのですが........」
浩司もお招きのお礼にと用意していたワインを差し出す。
「おぉ、これは素晴らしい。とても嬉しいよ。あとで一緒に飲もう!」
エドはプレゼントされてとても喜んでいる。
「ねぇ、ユーキ。ちょっといい?」
エリーが優樹の腕をとり、『少し借りるわよ?』と、浩司から引き離す。
優樹はバランスを崩しながらも引き摺られエリーの部屋まで連れてこられる。
エリーの部屋に優樹は先に通されて、エリーは誰も見ていないのを確認してドアを閉める。
どんな大事な話なのだろうか.......
優樹の頭にはエリーから出される言葉が気になって不安げだ。
そんな優樹に、エリーも笑顔で見つめたのだがすぐに申し訳なさそうな表情に変わった。
「なにもユーキの不安になることはないわよ。それよりもショウのことで謝りたくって......」
優樹の脳裏に、日本へ一時帰国したときのショウとの出来事がフラッシュバック。
すぐに浩司に上書きされたのだが、あの感触はまだ残っていないと言えば嘘ではなくて......
知らぬ間に優樹の指先が唇に触れる。
エリーは、すかさず頭を下げた。
「ユーキ、本当にごめんなさい!私が謝って済む問題ではないと思うの。それでも、ユーキには私からも伝えたかったの。まさか、ショウがそこまでユーキの事を手に入れようなんて.......本当は、トムが日本に行きユーキのパパに会う予定だったのよ。」
「エリー.......頭をあげてよ。エリーは、何も悪くないよ。ショウがちょっと、間違った方向に動いただけだよ。」
『それだけだよ。』そう言ってエリーを抱き締めた優樹。
「ユーキ......」
エリーの目からは一粒の涙が。
「心配しないで。自分には浩司が傍に居るから。ずっと守ってくれるって言ってるんだ。だから、大丈夫。」
自分にも言い聞かせるように、優樹はゆっくりと想いを伝えていく。
「ユーキ、ありがとうね。貴女ほどの心のやさしい人はいないわ........」
抱き締めてくれた優樹をエリーも抱き締め返した。
二人が抱き合って暫く経った頃、ドアがコンコンと叩く音がした。
「エリー、居るんだろう?パーティー始めるよ。ユーキも居るなら一緒に降りておいで。」
ドアの向こう側からトムの声がした。
『先に下で待ってるからね』一言声を掛けてくれたトムの階段を降りる足音が小さくなる。
抱き締めていた腕を解き、二人の間に空間ができて、見つめ合ったらお互いに笑みがこぼれた。
「そうね、ユーキ行きましょう?せっかくの料理がみんなに奪われちゃうわね。」
「うん。エリーのママの料理、楽しみにしてたんだ。」
「あら、本当?朝から張り切っていたから誉めてあげて。ママも喜ぶわ!」
『今年は、私も少しは手伝ったのよ。ユーキも遠慮せず食べてね!』
エリーは、階段を降りながらウインクをする。優樹はエリーの気遣いがとても嬉しかった。
今年のクリスマスパーティーは日本とはまた違った楽しさで、とても幸せな時間を過ごせたのだった。
暖かく迎えてくれたエリーの家族と、隣には大好きな浩司がいる。
数日後の大イベントのことなど忘れて楽しむ優樹だった。