たった一人の甘々王子さま
そして、次の日の朝。
早めに家を出る浩司にキスで起こされて今に至る。
数時間前まで隣で寝ていた浩司の温もりはもうなくなって、浩司が寝ていた跡と香りが残るだけ。
広く空いたスペースに手を伸ばしシーツを撫でる。
「本当に、忙しいんだろうな.......」
疑っている訳ではないのだが、一緒にいる時間が少なくなり寂しくなる。
ふと、時計に目をやる。
「もうすぐ9時かぁ.......」
待ち合わせのホテルまでは、ここから1時間もあれば余裕で到着する。
準備の時間だって、そんなに掛かるわけではないし.........
待ち合わせの2時に間に合うようにするなら12時頃から行動すれば余裕で間に合うはず。
「もう少し、寝よっかな~」
優樹はゴロゴロ継続中。
『う~ん』と、伸びをした先にある左手の薬指にはキラリと指輪が光る。
日本を発つときに浩司からもらった指輪。
こっちに来てからは出来るだけこの指に嵌めるようにしている。
『♪~♪~♪~』
優樹のスマホがメールの着信を告げる。
『ん~』うなり声を出しながらシーツにくるまったまま腕を伸ばす。
うつ伏せのままサイドテーブルに置いてあるスマホ目掛けて。
「あと、もうちょっと.......」
起き上がって手を伸ばした方が確実に手に取れるのに、布団から出たくないのか優樹は横着をする。
『♪~♪~♪~♪――――――』
「よしっ、取れた!」
指で画面をタッチしてスライドさせる。
ロックを解除してメール画面へ。
『誰かな~』なんて呟きながら送り主を確認。
「あ、エリーからだ!」
優樹の顔が綻ぶ。
『ハイ!ユーキ。起きてる?
ダーリンとの素敵なクリスマスを過ごしている筈なのに、パパが仕事を与えてしまってごめんなさいね!
その仕事、実はトムも一緒なのよね.......
だから、私も暇してるの。
もしよかったら、一緒にご飯食べない?
場所は、今から地図を送るからここに来てね!
私はもう此処に居るから、ユーキはロビーに着いたら連絡してね。』
なんと、浩司の仕事はエリーの父親も絡んでいたのか。
それなら致し方ない.......
必然的にトムも仕事になるわけで、エリーも暇になるはずだ。
「あ、地図来た.......ん?ここ、浩司との待ち合わせ場所と同じホテルだ。ラッキー!」
『今から準備して行く!待ってて!』
と、返信をした。
「よし、シャワー浴びて出掛けよっと!」
ベッドの下に落ちていた浩司のバスローブを手に取り袖を通す。
「浩司のはやっぱりおっきーな。.......ってうか、なにコレ?」
着ているバスローブを重ね合わせるときに、浩司がつけた赤い痕を見て呆れる。
『まったく、もう.......』そう呟いて、自分のバスローブは手にとってバスルームへ向かう。
優樹が呆れるのも無理はない。
浩司がつけた痕は、夏に海へ行ったらビキニは絶対に着られないくらい、いくつもあるのだから。