たった一人の甘々王子さま
月明かりで照らされる優樹とゆっくり視線を合わせて浩司はいう。
「優樹にプロポーズする事だよ。」
ゆっくりとそう伝えた。
のだが、優樹は目を見開いて
「は?今まで散々言ってたじゃん!明日にでも結婚するよって!」
まさかの言葉だったので、怒りを通り越して呆れる。
「あ、あれね。冗談っぽいのは大丈夫。」
「はぁ?なにそれ!」
『さっき、沢山気持ちいいキスをしておいてのこれ?信じられない!』
優樹の眉間に皺が入った。
そっぽを向いたら頬も膨らんだ。
「優樹、ごめん。こっち向いて?」
膨れっ面の優樹の頬を両手で包んだ浩司は自分の方へと向きを変える。
「優樹、ちゃんと聞いて。」
「ぶぅ。」
浩司の手で押されて優樹の頬にたまった空気が抜けた。
「いい?ちゃんと聞いてよ?」
浩司の表情も真剣身を帯びる。
浩司の手が頬から離れると優樹もつられて拗ねた顔が解かれていく。
『ふぅ』と、浩司が大きく息を吐く。
「田所優樹さん。突然の出会いだったのにも関わらず、俺を受け入れてくれてありがとう。これからも、ずっと貴女の隣に立つ男は俺でありたい。俺が幸せになるためには優樹、貴女が必要です。そして、あなたを幸せに出来るのも俺だけでありたい。」
浩司は優樹の両手をとる。
「俺.....相楽浩司と結婚してくれますか?」
浩司が言い切ると、優樹の目からは涙が溢れた。
そして、頬から顎へとこぼれ落ちていく。
浩司は優樹の返事をじっと待っている。
「は、はい。自分も........わ、わたしも.......浩司と、結婚.......したいです。」
優樹は初めて自分の事を『わたし』と言って浩司のプロポーズを受け入れた。
浩司も、優樹の返事を聞き逃さなかった。
「優樹、今、自分のこと『わたし』って言ったよね?」
「も、もう言わないもん!」
恥ずかしくて優樹は知らん顔。
顔は赤くなっているのに。
「優樹、ありがとう。嬉しいよ。」