たった一人の甘々王子さま
14 永遠の誓い
年が明けて、優樹の試験も終わり、浩司と優樹が日本に戻って来た。
今の季節は二月。
レポート提出もあるので、今日は優樹の大学へ来ている。
平日なのだが、有給を取った浩司も一緒に。
「優樹、レポート提出したらエミちゃんと会うんだろう?」
「うん。講義が終わったら食堂で会う約束してる」
二人で廊下を歩きながら会話をしているだけなのだが、すれ違う学生たちは
『ねぇ、今すれ違ったカップルってさ、モデルみたいだったね~』
『あ、私も思った!彼氏さんカッコいいね~』
『あんな彼氏、あたしも欲しい~!』
そんな声が聞こえると、優樹の機嫌が少しずつ悪くなる。
「......おモテになられることで」
ポツリと呟く。
「そんなモテる男の婚約者は誰ですかねぇ?」
浩司も負けずに呟く。
「フン......浩司のバカ......」
頬を赤く染めるのは相変わらず。だが、二年前に会ったときに比べると女の子らしくなったのは明らかで。
「コンコン!失礼します」
ドアをノックして声をかける優樹。
「はーい」
中から声が聞こえてドアを開ける。
『浩司は此処で待っててね』
と、声をかけて部屋の中へ。
「先生、お久しぶりです。コレ、持ってきました。よろしくお願いします」
「やぁ、田所さん。久しぶりだね。はい、どうも。確かに、受けとりました」
優樹のレポートを受け取った教授は開いたままのドアの外で待つ浩司に視線をやる。
優樹の担当教授は男性教授。
目が合った浩司が冷たい視線で返したのは言うまでもなく。
「田所さん」
「はい?何ですか?」
教授は優樹に一歩近づいて問い掛ける。勿論、浩司に見せつけるように。
「君ってもっとカッコ良い男前だったよね?」
「え?まぁ、そうですね......否定はしません」
「ふーん」
「な、何ですか?」
「彼のお陰で女になったんだねぇ」
「は?な、何言ってんですか!」
更に近づいてくる教授に優樹は後ろへ逃げる。ちょっとは学習したようだ。
「先生、何故此方に来るんですか?」
「え?それは君に迫ってるから。こんなに可愛くなるなら、早いうちに声掛けておくんだったかな?」
「は?冗談はやめてください。」
ゆっくりとした歩みで傍に来る教授がちょっと怖くなる。
「せ、先生......彼女居たでしょ?」
「ん?あぁ、フラれました。」
「は?嘘ばっかり!エミから聞いてますよ?」
「君たちは何処からその情報を仕入れているんですか?」
「極秘ですのでお答えできません。」
と、答えたところでドンと音がする。後ろ向きで歩く優樹が何かにぶつかったのだ。