たった一人の甘々王子さま
2 同棲始まる
週末がやって来た。
優樹にとってはこんなにも嬉しくない週末は初めてかも。
あの晩―――――――
父親に相楽浩司を紹介されて、直ぐに二人っきりになり、
『以前、出逢ったことを思い出して。』
と、言われて――――
見つめられて..........
キスされて..........
「うわ~~~~ッ!!」
優樹は思い出しては叫ぶ。
「違う!違う!!違う!!!」
両頬を叩きながら叫ぶ。
リビングのソファーに寝転びながら身体を左右に揺さぶる。
「アレは........アレは、........キスなんかじゃ..........」
相楽にされた額のキスを思い出した優樹は顔が火照っていく。
「ん~~~~~!!!!」
言葉にならない声を出す優樹。
いくら悶えていても、過ぎてしまったことは変える事が出来ない。
「はぁ~~~~っ。」
大きなため息をひとつつく。
そして、ゆっくり天井を見上げる。
窓の外は太陽の光が差し込み、
『今日の天気は晴れ。』
と、気象予報士から天気予報が案内される。当たってるなぁ~
に、しても―――――
朝起きても、引っ越しの準備が施される雰囲気は全くない。
『もしかしたら、引っ越しなんて冗談だったのかも?』
優樹は仄かな期待を抱く。
何故なら、父・良樹は朝早くに仕事に出ていった。
母・美樹も同窓会があるからと昨夜から泊まりで留守にしている。
弟の俊樹は――――未だ部屋で寝ているようだ。
こんな状態で、自分の引っ越しが行われるなんて..........誰も思わないよなぁ~。
「だけどアイツ、『新居で待ってるよ』なんて言ってたし........」
出会って間もない年上の相楽のコトはアイツ呼ばわりの優樹。
「父さんも『一緒に住め』って言ってたし........」
独り言が増える優樹。
「自分から引っ越しの準備するなんて楽しみにしてるみたいだから絶対にやらないもんね。」
決意したように自分に言い聞かせ、
『融通が利く日くらいのんびり過ごすかな~』
と、ソファーに寝転びながらTVを観だした。
TVをつけると丁度バラエティー番組が流れる。優樹の好きな芸人さんが出ていた。
観たいドラマがあるわけでもないので、暫くチャンネルを変えずに観続ける。
融通が利く日―――――今日のバスケ練習は午前は自主練習、午後からチーム練習だ。
自主練習なんて出来る気分じゃないから珍しくサボる。
のんびり過ごしているとあっという間に時間は過ぎていく―――――
『そろそろ、準備して出掛けるかな~』
起き上がって、伸びをしてTVを消す。
そしてそのまま自分の部屋に戻る。
これが自分の部屋に戻る最後の日だとはおも思わずに―――――――。