たった一人の甘々王子さま


「はい。こちらお預かりした保険証と診察券になります。お大事になさってくださいね」


「ありがとうございます」


生徒の吉永さんは泣いて赤くなった目をタオルで隠しながら会計を済ました。優樹も付き添っている。
診察結果は―――




あのあと、授業を終えて部活は顧問の先生にお休みをもらい、女医さんが居る病院にきた。


診察の順番待ちをしているとき、不安が大きくなったのか生徒の吉永さんは優樹の傍から離れなかった。


彼女の希望で診察室には一緒に同室して、一緒に検査結果を聞く。


「吉永さん、最近の食生活はどうでしたか?」


「......試験勉強や受験の事で規則正しい生活は送れていないと思います。睡眠時間は......5時間くらいだと思います」


「そうですか。では、先程の内視鏡検査結果を言いますね。妊娠ですが......」


女医さんの言葉の間がとても長く感じた。診察台に乗るだけでもこの子にとっては凄く勇気のいることだったんだろう。優樹は震えている手をそっと握ってあげた。
そして、結果の言葉を待つ。


「妊娠ですが、していませんでした。今、受験生だよね?色々な緊張やストレスが原因だと思います。無理なダイエットなどせずに、三食食べて、睡眠はちゃんと取ってね。生理も、そろそろ来るはずよ」


「よっ、良かった~」


そう言葉をもらした生徒を見ると安心したのか涙がこぼれ落ちていた。優樹もそっと抱き寄せて、肩をさすってあげた。


「今度からは、彼ときちんと話して、『避妊』してくださいね」


「.........はい。ありがとうございます」


安堵感で堪えていた涙が溢れた生徒に優樹もホッとしながら抱き締めて


「良かったね。自分の体、もっと大切にしなよ?」


「ゆ、優樹ちゃん......ありがと」


二人で抱き合い、喜んだ。


「さ、立てる?」


優樹は体を支えながら促した。


「うん、大丈夫」


そう言いながら涙を拭いた彼女を見たら、笑顔が見られた。


優樹も笑顔を返して、頭を下げて診察室を出た。


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