たった一人の甘々王子さま


「さて、優樹は料理したことある?」


手を繋いだまま浩司に聞かれる。


「え?いつも美樹ちゃんがやってくれるからしない。」


「美樹ちゃん?」


「ん?母さんだよ。」


『本人が名前で呼んでって言うんだよ。』
と、説明する優樹。


まだ二人の手は繋がったままだ。


「そっか、優樹はこれから少しずつ覚えていこうか―――ね?」


浩司は、繋いだ手を持ち上げて、優樹の手の甲に『チュッ』


「うわぁ!!やめろよっ! そんなことアンタに頼んでないっ!」


慌てて繋がれた手を振りほどこうとする。


だが、それを逃がさない浩司。
離すものかと更に強く握る。


「気になったんだけどさ―――――」


少し冷めた目線を向けると、こう聞いた。


「優樹ってさ、自分の名前を呼び捨てにされるのは抵抗ないんだね?誰にでもそう呼ばせるの?」


は?何だそんなこと..........
優樹は呆れた感じで


「自分の名前だし、間違ってないし、気にしてない。呼びたい人に任せてるよ。」


その言葉に


「俺は、家族以外の男が優樹の名前を呼び捨てにするのは嫌だね。気分が悪い。」


それと――――


「俺の事も『浩司』って早く呼んでよ。」


「は?なんで?」


「なんでって、俺達、婚約者だよ?お互いのことは名前で呼びあおうよ。」


「自分は無理だね。」


相変わらず、即答する。


「ふーん。あとね、もうひとつ。」


「は?まだなんかあるの?」


「俺の前では、『わたし』って言って。」


「はぁ? 注文多すぎ!自分は自分だから間違ってないし。いまさら無理だよ!」


強めの口調で返す。


「ふーん。優樹がそういう態度なら、こっちにも考えがあるよ。」

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