たった一人の甘々王子さま
食堂に到着して、いつものランチセットを注文し、受けとる。
エミと二人で空いている席を探し、窓際の席を見つけて移動する。
「「いただきます。」」
二人で声を合わせて食べ始める。
いつ、エミからの質問攻めが来るのかと内心ドキドキする優樹だったが、食べ始めるとお腹が満たされていき、癒される。
もう問われていたことすら忘れていきそうだ。
食事中、多少なりとも会話はあるのだが、教授の話やら共通の友人の話ばかり。
警戒していた優樹はとりとめのない話ばかりだったので、さっきまでの不安が消えていく。
「ごちそうさまでした。」
優樹の方が先に食べ終わる。
と、待ってましたと言わんばかりにエミからの質問が来た。
油断していた優樹は一瞬で固まる。
「はい、さっきの続き。優樹、相楽さんと何かあったでしょ? その変わりよう、自分で気がついてる?」
―――――ドキッ!!!
勿論、優樹には心当たりがある。
何せ、その男の言葉で変わろうと思い始めたのだから。
「何って何が?」
とりあえず知らん顔して質問返し。
「何って........そうねぇ~。」
一瞬考えた素振りをしたエミ。
しかし、もうすでに用意していた言葉があったのだろう。
「例えば、女の子扱いされたのは勿論のこと..........抱き締められてキスもされた?なんてね~。」
にっこり笑顔で当てられた。
優樹の顔はひきつる――――
エミは更に付け加えて、
「優樹って、男性の免疫ないでしょ?中・高共に女子校だったし?大人の男に捕まったら、あっという間だよ?格好いい優樹が可愛らしい優樹になっちゃうのは。」
エミさん、良く解ってらっしゃる........
優樹は固まったまま動けない。
そんなに分かりやすかったか?
服装だっていつもと同じ。仕草も変わってないし........
「図星ね?」
フフン~!と、言わんばかりの可愛い笑顔で愛美は食事を続ける。
「あ、因みに。」
「え?まだ何かあるの?」
優樹は不信感でいっぱい。
そんな優樹の事など気にせずに、
「相楽さんと同棲してること、俊樹くんから聞いてるからね。悪しからず。」
「―――――――ッ!!」
優樹の顔は真っ赤です。
もう、エミの事など見られない。
大きな体が小さくなっていく。
もう、エミには何でもお見通しだ。
俊樹も居ることだし、隠せるわけがない。
「あのさ........まぁ........エミの言うこと、間違ってはないんだけどさ..........」
優樹は、もう認めるしかない。
だが、歯切れの悪い言い方しか出来ない。
「やっぱり!で、二人の関係、近づいた?」
「え?あぁ~ん~どうだろう?」
「優樹!」
「うぅ........。実は、..........浩司と......恋愛?すること............に、なりました......。」
「あら?ほんと?良かったねぇ!って言うか、もう名前呼びなの?いい傾向ね~」
エミからの賛同が出た。
止められるかと思ったのに。
「ねぇ、ほんとに賛成なの?」
優樹は問いかける。
「勿論よ。優樹にもちゃんと女の幸せ感じてほしいもの。私は俊樹くんと幸せ感じてますし。」
エミは微笑んで答える。
本当に男勝りの優樹のコトを心配していたのだろう。
『ダブルデートしたいわね!』
なんて、茶化すエミに
『ムリ、ムリ、ムリ!』
と、動揺する優樹。
此れからの事を思うと、やっぱり‘今までのように過ごそう’と、優樹は思った。
でも、たった数日一緒に過ごしただけで変わったかな?全くわからん..........
浩司の事だって嫌いじゃないけど好きなのかどうかって聞かれると、わかんない。
向こうは自分のこと知っていたみたいで........って言うか、出会っていたって言われても、記憶がね........さっぱりです。
浩司との恋愛が進んでいくと、必ずエミに確認されそうで怖いなぁ。
聞かれる前にバレそうですが―――――
エミは人のコトを良く見てるし、可愛い顔して突っ込んでくるしなぁ~。
あ、だから俊樹の彼女で居られるのか..........
はぁ~、恋愛するの、疲れそう。
優樹は一人で溜め息をつくのだった。