たった一人の甘々王子さま
浩司はいま、理性総動員でこの状況を耐えている。
なんせ、顔を赤らめた優樹が上目使いに見つめてくる。
好きな女がそんな目線を送るのだから堪ったもんじゃない。
そんな浩司の心の内を知らない優樹は浩司のスエットの裾を然り気無く掴んでくる。
見つめる瞳には涙が滲みかけている。
もう、意地悪でもしたくなる。
「ふーん。俺をみるとそんな気持ちになるんだ? ねぇ、優樹。どうしてか解かる?」
「―――――だから、それが解んないんだってば!!」
優樹はふて腐れていく。
河豚になりそうな優樹に、
「教えてあげるよ。それはね........優樹が俺の事を好きになり始めてるからだよ?」
さらっと、ネタバレする浩司。
もう、待てないのだ。
早く、自分と同じ気持ちになって欲しい。
「誰でも、好きな人ができると、その人を思うだけで胸がドキドキする。傍にいたいって思う。」
浩司は続ける。
「勿論、俺も。優樹が好きだから、傍にいたいと思う。触れたいって思う。」
優樹の心に響く。
ストンとパズルのピースが填まった感じ。
エミに言われたときは認めることができなかったのに―――――――
「...........これって、この気持ちが、浩司を好きってこと?」
そう言われると、浩司が傍に来るとドキドキするし、恥ずかしくなる。
え?これが、好きってこと?
優樹の言葉を聞いて浩司が喜ぶ。
「そうだよ。やっと優樹も恋をしてくれたんだね。」
とても嬉しそうに優樹の身体を抱き締める。
「俺と優樹は今日から本当の恋人同士だよ。優樹の気持ちが解ったから遠慮はしない。沢山愛してあげるから覚悟してね。」
チュッ!―――――
浩司がクッションで隠れていない額にキスを落とす。
優樹は嫌がることなく、初めて素直に受け入れた。
「優樹、好きだよ――――――」
初めて男性を意識して、恋を知った優樹。
浩司の胸に顔を埋める。
その仕草に微笑み、抱き寄せる浩司。
二人の恋愛が、今、始まる。