たった一人の甘々王子さま
食事を終えて、着替えてやって来たのは―――――
「優樹はここの水族館に来たことある?」
浩司に連れてこられたのは遊園地が隣接する水族館だ。
海に近いここは、旅客船も行き来する。
今日の優樹の格好はいつものジャージ姿からは想像つかない。
膝上丈のハーフパンツにカッターシャツ。上着にパーカーを羽織って、バスケをしている優樹らしいスポーティーな服装だ。
ハーフパンツから見える長い足が、見ず知らずの男にさらけ出しているのが腹立だしい.......
『ドン!』
『イタっ!』
『わっ!』
足元で誰かとぶつかる音がした。
優樹はバランスを崩して浩司にもたれ掛かり、足元で尻餅をついた人が........
すかさず下を見ると小さい男の子が倒れていた。
「うわぁ、ごめん!僕、大丈夫か?怪我してない?」
優樹がしゃがみこみ、倒れている子供を立ち上がらせる。
「ううん......怪我、してない........」
5、6歳くらいの男の子だろうか。
「ごめんね、君の進む道を邪魔していたね。」
優樹が男の子のズボンを軽く祓う。
そこへ両親と思われる夫婦がやって来た。
「すみません、うちの子がご迷惑お掛けしました。お怪我はありませんか?」
母親が頭を下げる。
「いえ、こちらは大丈夫ですが..........」
優樹は男の子を見る。
「さすが男だね!尻餅ついても泣かなかった。今度は人にぶつからないように進むんだよ?ママとの約束は守ってね。」
「うん、ありがとう。そして、ぶつかってごめんなさい。」
『バイバイ、おねーちゃん!』
そう言って小さな男の子は去っていった。
こんなトラブルも休日ならではの事だ。