たった一人の甘々王子さま
「楽しかったぁ―――」
車に乗り込み、シートにもたれながら優樹は言う。
水族館と、遊園地どちらも楽しめたようだ。
後部座席には優樹の欲しがったペンギンの抱き枕が置かれている。
「さて、今夜は外食しようか?」
ハンドルを握り、次の目的地を告げる。
優樹と暮らすようになってから外食するのは初めてだ。
「え?ほんと?いいの?」
「勿論、初デートの記念にね。」
そう言って街灯の灯る道を走る。
優樹の視線は窓の外。
流れ行く景色に意識を持っていかれる。
車内には心地よい音楽が流れている。
目を閉じると、そのまま寝てしまいそうだ。
「優樹、疲れただろう?到着したら起こすから寝てていいよ。」
信号待ちで停止したとき浩司が声をかける。
「うん、ごめん........チョッとだけ..........」
間もなくして、優樹は寝息を立てた。
浩司は今日のデートを振り返った。
『素の優樹が見られたかな―――』
小さな男の子にぶつかられたのに、優しく対応。
可愛い優樹ににやけてた俺が目線を合わさなかっただけで拗ねて泣き出した。
ショーを観ているときのはしゃぎようったらない。
今の優樹を知っていく度にもっと好きになる。
初めて逢ってからもう何年も経つのに―――――
優樹はいつ思い出してくれるのだろうか..........
いつか思い出してくれるのを願って..........
浩司は、寝ている優樹の頬に触れて、また車を走らせる。