たった一人の甘々王子さま
連れてこられたのはホテルの最上階。
展望レストランだ。
夜景が綺麗で大人のカップルに人気の場所だと、先輩から聞いたことがある。
「予約した相楽です。」
「相楽様、いつもご利用ありがとうございます。お待ち致しておりました。どう
ぞ、こちらへ。」
受付に居た黒服の男性に案内される。
薄暗い廊下を通って案内される。
浩司よりも背が高く飾られた花が迎えてくれる。
優樹は場違いな感じがして『キュッ』と、浩司にしがみつく。
すると、浩司も『ピクリ』と反応するが優樹は気づいていない。
右へ左へ小さな段差を登り、窓際のテーブル席へ通された。
二人掛け用のソファーに向かい合うように座る。
黒服さんからメニューを受け取り暫く見つめた後、浩司が
「俺のオススメでいい?」
と聞くので
「お任せします。」
そう答えた。
静かな音楽が流れる店内。
ソファーの、背もたれや仕切りの壁が高いので個室のように感じる。
ふと、窓の外を見れば眼下に広がる景色がキラキラ輝いていて、今住んでいるマンションとは違った雰囲気だ。
「マンションから見るのも良いけど、ここからだともっと凄いね。ライトが宝石みたいに輝いてる。連れてきてくれてありがとう。」
優樹が可愛らしい笑顔でお礼を言う。
浩司も微笑む。
「気に入ってもらえて良かったよ。食事もそうだといいな。」
そう浩司に見つめられて、頬を赤らめる。
「お待たせ致しました。食前酒です。」
シャンパングラスが目の前に置かれる。
「優樹、乾杯しよう。」
「うん。」
「初デートに」
「「乾杯!!」」
グラスを合わせると綺麗な音がした。
一口飲むと細かい炭酸が口の中に広がる。
「初めてだけど、飲みやすくて美味しいね。」
「優樹に気に入ってもらえて良かったよ。」
「うん、ありがと。料理も楽しみ。」
緊張していた優樹も前菜が運ばれて、メイン料理やスープが運ばれてくるといつもの笑顔が出てきた。
食事中は水族館や遊園地での出来事を思い出して話していた。
アルコールのせいもあるのかいつもより会話が弾んでいく。