たった一人の甘々王子さま


連れてこられたのはホテルの最上階。
展望レストランだ。
夜景が綺麗で大人のカップルに人気の場所だと、先輩から聞いたことがある。


「予約した相楽です。」


「相楽様、いつもご利用ありがとうございます。お待ち致しておりました。どう
ぞ、こちらへ。」


受付に居た黒服の男性に案内される。


薄暗い廊下を通って案内される。
浩司よりも背が高く飾られた花が迎えてくれる。


優樹は場違いな感じがして『キュッ』と、浩司にしがみつく。


すると、浩司も『ピクリ』と反応するが優樹は気づいていない。


右へ左へ小さな段差を登り、窓際のテーブル席へ通された。


二人掛け用のソファーに向かい合うように座る。


黒服さんからメニューを受け取り暫く見つめた後、浩司が


「俺のオススメでいい?」


と聞くので


「お任せします。」


そう答えた。





静かな音楽が流れる店内。
ソファーの、背もたれや仕切りの壁が高いので個室のように感じる。


ふと、窓の外を見れば眼下に広がる景色がキラキラ輝いていて、今住んでいるマンションとは違った雰囲気だ。


「マンションから見るのも良いけど、ここからだともっと凄いね。ライトが宝石みたいに輝いてる。連れてきてくれてありがとう。」


優樹が可愛らしい笑顔でお礼を言う。
浩司も微笑む。


「気に入ってもらえて良かったよ。食事もそうだといいな。」


そう浩司に見つめられて、頬を赤らめる。


「お待たせ致しました。食前酒です。」


シャンパングラスが目の前に置かれる。


「優樹、乾杯しよう。」


「うん。」


「初デートに」


「「乾杯!!」」


グラスを合わせると綺麗な音がした。


一口飲むと細かい炭酸が口の中に広がる。


「初めてだけど、飲みやすくて美味しいね。」


「優樹に気に入ってもらえて良かったよ。」


「うん、ありがと。料理も楽しみ。」





緊張していた優樹も前菜が運ばれて、メイン料理やスープが運ばれてくるといつもの笑顔が出てきた。


食事中は水族館や遊園地での出来事を思い出して話していた。


アルコールのせいもあるのかいつもより会話が弾んでいく。

< 45 / 187 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop