たった一人の甘々王子さま
最後のデザートが運ばれて、一口食べたところで
「優樹........今夜なんだけどね。」
「うん、なに?」
優樹はデザート用のスプーンを置く。
食べながらではなくきちんと聞いた方がいいと思ったのだ。
浩司が一呼吸置いて、
「ここに、泊まるよ?」
静かな空間に、浩司の低い声が響く。
優樹の目が見開く。
そして、固まる。
テーブルの上にカードキーが置かれた。
浩司はすでに部屋の予約をしたのだろう。
「―――優樹は、ヤダ? 帰りたい?」
浩司の視線が突き刺さる。
食後のコーヒーを飲んでいるのに目線は優樹を捕らえる。
獣にロックオンされたような感覚。
逃げられそうにない―――――
「――――とっ....」
優樹は言葉に詰まる。
「と?」
浩司は優しく繰り返す。
「と、泊まるだけ........だよ?」
優樹は上目遣いで答える。
ほっとした浩司は欲を出す。
「キスは?」
「――――――!!!!」
優樹は照れて何も言えない。
「優樹?」
「................考えておきます。」
もう、残りのデザートなんて食べられない。
そんな気分じゃない。
ドキドキしすぎて自分で対処できない。
再び湧き出た緊張で優樹は倒れそうだ。
「――――浩司....」
優樹の声は今にも泣きそう。
「ん?ケーキ、もういいの?」
「うん、もういい――――― 」
俯いた優樹は、震える自分の手を膝の上から持ち上げ、自分の胸元でギュッと握る。
「..........恥ずかしいから帰りたい」
頬を赤く染めている優樹。
浩司は席を立って優樹の傍へ。
「いくよ?」
「え?」
優樹の手を取り、席を立たせる。