たった一人の甘々王子さま
「ありがとうございました。」
レストランスタッフに頭を下げられて店を出る。
浩司に繋がれている手がギュッと強く握られ、エレベーターで下に降りる。
直ぐに『ポン』と、到着した合図が聞こえる。
エレベーターの扉が開くと引っ張られるように歩いた。
カードキーが差し込まれ部屋のドアが開く。
そして、部屋に入ったとたん壁際に追いやられた。
『ドン!』
と、優樹の背中が壁とぶつかると同時に浩司の唇が優樹のそれに塞がれた。
リップ音がすると優樹の唇は解放される。
激しいキスに酔わされて、もう立っていることすら困難だ。
崩れ落ちそうなところを浩司に抱きかかえられて――――
「ごめん、優樹。我慢できなかった..........」
浩司は優樹の耳元で呟いた。
肩で息をする優樹は浩司の胸にもたれ掛かる。
「よっ。」
掛け声と共に優樹の体が浮く。
お姫様だっこをされたのだ。
初めてされることに驚く優樹は浩司の肩につい手を置いた。
「ベッド、行くよ?」
廊下を進み、リビングが見える。大きなソファーの横を通りすぎ奥へ突き進む。
と、そこには大きなベッドがあった。
ダブルベッドよりも大きく感じる。
優樹はそっとベッドの上に置かれた。
「―――――浩司?」
呼び掛けながら優樹の手は浩司から離れた。
浩司は何も言わない。
優樹をベッドまで運ぶと浩司もその隣へ座り、寝転ぶ。
仰向けで寝ているのだが両手の甲で顔を覆っている。
「ねぇ、浩司..........どうした?怒ってる?」
不安ばかりが大きくなる優樹は問いかける。