たった一人の甘々王子さま


浩司がバスルームへ消えていった。


実は、優樹の心肺はこれでもかというくらいバクバクしている。
何故なら、この部屋に来てすぐ浩司から受けたキスを思い出したから。


ベッドの上に座って記憶を辿る。



初めてのキス


大人のキス


キモチいいキス



自分と浩司の舌が甘さを求めて絡み合った。
離れたくないって。
もっと傍にいたいって。


キスだけじゃ足りない?
もっともっと浩司に触れていたい?


『あんなキスならもっとしたい』


優樹の指が浩司の記憶をさがして下唇に触れる。


此処に触れた、あの柔らかい感触。


もう一度...........ううん、もっと欲しくなる。
なんで、こんなこと思うんだろう。


「あれ? これって浩司が好きってこと? だから、キスじゃ足りないってこと?
傍に居たいってこと?もっと触れてほしいってこと―――?」


優樹が独り言を言葉にすると


「優樹、それホント?」


心地よい低い声で返事がくる。


優樹が振り向くと同じようにバスローブを纏った浩司が傍にいた。


一歩一歩、ゆっくりとベッドサイドに近付いてくる。


「優樹?」


浩司が優樹の隣に腰かける。


優樹は動かず、浩司の動きを追うだけ。


「俺が、優樹に触れてもいいの?」


浩司の手が優樹の頬に触れる。


「そんなの、わかんない........。」


優樹の視線だけ下を向く。


「こうするの、イヤ?」


浩司が優樹の両頬を包み、互いのおでこを触れ合わせる。


「............イヤ........じゃない。」


優樹は顔を横に振る。


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