たった一人の甘々王子さま


「これから出掛けるんでしょ? シャワー浴びたいんだけど、時間ある?」


優樹はそう問いかけながらシーツを身体に巻き付けてベッドから降りようとする。


「あぁ、大丈夫だけど..........」


浩司は答える。
が、次の言葉を言いかけたとき優樹が被せるように


「因みに、シャワーは一人で浴びます。浩司はあとでね。」


と、『あっかんべー』して部屋を出ていった。
その後ろ姿に、


「優樹はやっぱり可愛い........」


と、浩司は気持ちを言葉に出した。


優樹の背中を見つめて、真新しい赤い花が浩司の幸せを増殖させていった。



―――――――――――――――――――


ホテルを出て、先ず向かったのはカフェレストラン。
テラスもあって、若いカップル向けの店内は休日のせいか賑やかだった。


二人はサンドイッチとサラダとコーヒーを頼んで食べる。
このあとの予定を決めながら。


「映画も行きたいんだよね。」


と、優樹が言えば


「今からだとコレとコレだね、恋愛ものとアクション。どっちにしようか?」


何処にでも居る恋人同士の会話が聞こえる。
どんな会話でも、優樹にとっては全てが初めて。恋人が居たことなんてなかったのだから。


「あと、ショッピングもしたい。えっと、いつだったかな? 泊まりがけで試合があるんだよ。」


そう言って、最後のサンドイッチを食べ終えた優樹。


「え?泊まり?聞いてないよ。」


「うん、今初めて言ったもん。」


優樹はコーヒーも飲み終えてご馳走さまをする。
浩司の眉間に縦皺ができる。


「それって、男子も一緒?」


浩司の問いに


「あったり前じゃん、バスケは男子もするし。」


何を今さら......って感じの飽きれ顔の優樹。


「..........やだな。行かせたくない。」


小さな声でヤキモチ発言をする浩司。
そんな浩司に驚きつつ、可愛らしくも思う優樹。


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