たった一人の甘々王子さま


「エミ、おはよう。今朝はありがとな」


優樹は先に席についていたエミに挨拶する。そして、空いている右隣に座る。


「優樹、おはよう。どういたしまして」


声をかけられたエミも笑顔でかえす。
いつ見ても可愛い笑顔だ。
イライラした朝もこの笑顔でチャラに出来る。まぁ、俊に向ける笑顔はもっと色っぽいんだろうが―――



エミこと横澤愛美は子供の頃からの幼馴染み――みたいなものだ。
可愛い小動物系のエミは俊樹のドストライクのタイプ。
二十歳の双子がいるのにも関わらすいつまでも可愛らしい母・美樹を見れば、父・良樹と俊樹の女性の好みが同じだというのは良くわかる。


彼女の祖父が田所コーポレーションの筆頭株主。その縁でお付き合いがあったのだが、彼女の父の海外出張で幼少期に遊んだ記憶はあまりない。


エミとは5歳の夏に出会ったのが初めて。その後14歳の時に再会しエミと俊樹はお互いに......。


しかし、海外生活中のエミは俊樹に会うために、長期休暇の度に毎年帰国。幼いながらに愛を育んでいた。


そんなエミは両親を説得して大学から日本に住んでいる祖父母宅で生活するようになった。


『優樹ちゃんと同じ大学なら―――』と。


許可をもらって。



「あ、エミ」


「なあに?」


「今日の午後さ、俊の大学で練習試合だけど来る?今日、教授に会うし、構内にいるって........俊に会えるかもしれないよ?」


「え?俊樹くんに?」


『最近、俊樹くんが忙しくて会ってないんだよね~会いたいなぁ~行こっかなぁ~』


エミは俊樹を思い出しながら考えている。
そんな横顔も可愛いったらありゃしない........。
同性なのに優樹はエミの笑顔が大好きだ。
俊樹の前でもよく見つめているので『俺のエミに惚れんじゃねーよ!』と、ヤキモチを焼かれることも暫し........。




二人が両家の親公認で交際したのは大学に合格してから。もうすぐ2年だ。そろそろ婚約話が出てくる雰囲気。


あ、もしかして―――


『俊樹とエミのことで話があるのかも......!』


父親からの呼び出しはそれかもしれない。
なんて、答えをだした優樹。
呼び出しがどんな内容の話かわからないことでウジウジ悩んでいても仕方がない。


午後からは大好きなバスケができる。
俊樹の通う大学まで行くが、久しぶりの練習試合だ。


『よし、気持ちを切り替えよう』


と、気合いをいれる。


そんな気合いをいれた優樹の横顔はやっぱりイケメンだ―――――




「あ、優樹くんおはよう!」


「あぁ、おはよう」


『君』呼ばれしても、問題なし。


「今日もイケメンだね~」


「サンキュ」


お礼を言うくらいだ――――


「今度デートしようね~」


「あ、私もデートした~い!」


なんて、声がかかる。


どんな気分の時でもいつもと同じ会話が交わされていく――――


そんな日々は優樹にとって心地よいものなのだ。

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