たった一人の甘々王子さま
チャポン――――――――――
浴槽に張ったお湯が音をたてる。
優樹は、身体を洗ったあと湯に浸かってゆっくりのんびりとした一時を過ごす。
『んー、気持ちいい~幸せ~』
洗い場では浩司が泡まみれだ。
肩から肩甲骨にかけてのラインが男らしくて見惚れる。
横目でちらりと見ていたら、浩司も優樹の視線に気づく。
浩司の優樹を見つめる視線が優しくて、逸らすことができない。胸がキュンとする。
「入浴剤が優樹の身体を更に色っぽく演出してるよね。見えそうで見えないから、色っぽい。」
なんて、言うから優樹の顔は真っ赤になる。恥ずかしいから後ろを向いて、首までお湯に浸かる。
「そんなことないもん!」
照れる優樹に浩司はキスをしたくなった。
とりあえず、このままでは触れることが出来ないので、浩司はシャワーで泡を流して湯船に浸かる。
水位が上がると、優樹はすすーっと浩司から離れるように浴槽の縁に移動して小さくなる。
「あれ?なんでそんな端っこにいくの?」
浩司は優樹の腕を掴み、腰に触れ、自身の胸の中へ連れてくる。
浮力があって流れるように優樹の身体が浩司の腕に包まれる。
「ち、ちょっと......何にもしないんでしょ?なんで?離して!」
優樹は、照れて恥ずかしくて逃げようとする。
そんな優樹を気にすることなく、
「あー幸せ! 優樹がこんなにも近くにいるなんてね。」
と、言うので
「......ほんと?」
と、聞いてみた。
「ほんとだよ。俺さ、優樹の事が好きすぎて病気になりそう........」
優樹の腰をキュッと抱き締めて、首筋に顔を埋めて、浩司は素直な気持ちを伝えた。
すると、
「自分も..........浩司が好き。誰かを好きになるって、初めてなんだ..........」
巻き付かれた腕に手を沿わせる。
優樹の顔はきっと赤く染まっているのだろう。
素直な気持ちが言えたのだから、このまま思っていることを吐き出してもいいのかもしれない。
「あのさ、浩司って........今までたくさんモテたんでしょ?」
優樹は、気合いをいれて言葉に出す。
浩司は、黙って聞いてるだけ。
「えっとね、浩司がだからね、怖いんだ。 浩司の仕事場には綺麗なおねーさんがいっぱい居るし......今日は、おねーさんの目がイヤだった..........」
少しずつ不安を口にする優樹。
言っていくと、段々苦しくなってきた。
最後まで言えないかもしれない。
そんな優樹を、浩司はクルッとひっくり返すように向きを変えて横抱きにした。
浩司の左胸に頭を傾けられた。
なにも言われなくても、浩司のその抱き締めだけで黒いイヤな気持ちが消えていくようだ。
「優樹の言いたいことはわかるよ。そんなことは気にしないで欲しい。俺が傍に居たいと思う人は優樹ただ一人だから。この痕が証拠ね。」
浩司は優樹の胸元に咲く花を突ついていく。
「ここと、ここ。昨日の夜、ちょっと強く吸いすぎて赤くなりすぎたね........俺のモノって、印。嬉しくなるね。」
浩司の甘い声で、優樹はとろけそうだ。
恥ずかしくて浩司の顔が見れない。
浩司の胸元に視線を向けると、優樹がつけたキスマークが浩司の鎖骨下についていた。
その動きに気がついた浩司は、
「俺にも優樹のモノだって印があるね。嬉しいよ。」