たった一人の甘々王子さま


「......恥ずかしいから言わないでよ。 ............もう、お風呂出る。」


優樹は、立ち上がろうと腰に置かれた浩司の腕を外そうとした。


が、勿論、浩司はそれを許すことはない。
優樹は、立ち上がることすらできない。
逆に、もっと抱き寄せられてしまった。


なんとか、此の腕をほどく方法を考える。
浩司の腕は..........離れない。
背を向けようと捻ると..........背中にキスされた。


優樹の身体が一気に熱をもつ。
逃れようとするが、水面が波打って音を出すだけ。


「ね、浩司。逆上せちゃうよ........お風呂出る。出たいの......」


「まだ、仲直りしてないよ?優樹から仲直りのキスしてくれたら、出よっか?」


優樹のお願いを自分のお願いにすり替えてキスを待つ。
此の男、確信犯だ。


「もう、意地悪........」


背を向けた優樹が振り向いてかわいく呟くと、浩司の首に腕を巻き付けて、引き寄せる。
唇が触れ合うまであと少し。
優樹の唇が少し開いて浩司のそれに近づく。


『チュッ!』と、小さな音がする。
優樹の顔は照れて赤いのか、逆上せて赤いのかわからない。


そんな優樹を見て浩司にスイッチが入ったらしく、キスは止まらない。
更に深くなっていく。


優樹の瞳もトロンとしてきた。
気持ちよかったのか、唇が離れたとき浩司の胸へ倒れてきた。
優樹の顔を見ると、本当に頬が赤い。


「優樹、ほんとに逆上せた? さあ、出るよ?」


「浩司のバカ........全部引っくるめて、もうダメ..........。立てない........」


優樹の此の声は、浩司の理性を壊すには充分だ。
上目遣いは、ヤバイ。
抱きたくなった。


優樹を抱き上げてお風呂を出た。
洗面台に座らせて、身体を拭く。
恥ずかしがって身を捩る優樹にバスタオルを巻き付ける。


浩司も自分の身体もさっと拭き、腰にタオルを巻いて、優樹をお姫様抱っこしてベッドルームへ移動した。


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