たった一人の甘々王子さま


昼食は、俊樹の通う大学で食べる事になった。
優樹は親子丼セット。
エミはオムライス。


大学に到着して、食堂へ行く道すがら俊樹にLINEで連絡をいれる。


『一緒にお昼食べれる?エミもいるし』


しかし、
未だ教授から解放されない俊樹の返事は


『スマン!試合が始まるまでには顔を出すよ!』


だった。
ガッカリしたのは、もちろんエミだ。
オムライスにスプーンを刺してポツリと呟く。


「俊樹くん、急に忙しくなったみたいなの。」


「ん?そういえば、いつだったかな.........父さんと何か話してるの見たよ。きっとさ、跡取りならではの課題こなしてるんじゃないの?」


親子丼を掻き込みながら優樹も二人のやり取りを思い出す。きょうだいといってもなかなか会わないのだ。
今朝会えたのも1週間ぶり。


「......うん、元気ならいいんだけどね。」


昼食を食べながら、いつか出掛けた旅行の写真をみながら溜め息をついている。


「今日は会えるんだから、泣くなって。な?未来の社長夫人!」


「もう、優樹ったら.........ありがとね。」


優樹とエミは端からみれば本当に恋人。
エミにとっては未来の小姑にあたる優樹だが、この二人は仲良くやっていけるだろう。



―――――――――――――――――――



準備が出来次第、体育館へ移動する。
キャプテン同士挨拶を交わし、今日の段取りの確認。


お互いの練習内容を確認して、1時間後に練習試合開始。


「よし、体を動かしてスッキリするぞ!」


そんな掛け声の優樹に


「空回りして怪我しないでよね?」


エミからチェックが入る。


「わかってるよ。行ってくる」


「はい、行ってらっしゃい」


俊には悪いが、そんなやり取りをしていると夫婦みたいだ。


どこかの物陰で除いていたら、ヤキモチ焼かれて物でも投げられ怪我しそうだ―――――


「知らない人が見たら、優樹くんとエミちゃん恋人同士にみえるよね~」


チームメイトからの何気ない言葉。いつものことなのだが――――


「あれ?エミ先輩彼氏さんいますよね?」


「優樹先輩の事を知らない人だったら、絶対にヤキモチやいちゃいますね~」


準備運動をしながら先輩、後輩の会話が飛び交う........


いつものことながら、この手の会話には俊樹に申し訳ないと思う。


いつもエミとは笑ってやり過ごす。


すべての人に自分達のプライベートをバラすのは抵抗がある優樹。
特に俊樹とエミのことは........







さて、そろそろ試合だ。


今回も勝つぞ――――――――!!!


オーー!!

< 7 / 187 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop