たった一人の甘々王子さま
家を出て、集合場所の大学へ向かう。
それから2時間後、合宿先に到着。
バスを貸し切ってここまで来た。
山間部に建てられた施設は緑に囲まれてとても癒される場所。
宿泊施設も利用する体育館もグラウンドもとても広くて綺麗だ。
バスから降りて荷物を持ち、館内受付の横にある施設案内と見取り図を見ていると気持ちが高ぶる。
「はい、みんな集合! まず、各部屋に荷物をおいて30分後に1階のロビーに集合。部屋割りや今後の大まかな予定は先に渡した冊子に書いてあるから目を通しておくように。はい、解散。」
キャプテンの声でみんなが動き出す。
「えっと、男子は2階で女子は3階なんだね。で、自分の部屋は........」
優樹が冊子片手に部屋の確認をしていたら後ろから声がかかる。
「優樹くん、こっちよ。一緒にいきましょう。」
「あ、涼子先輩。もしかして同室でしたか? 宜しくお願いします。」
涼子先輩は、以前、浩司と会う前にとても不機嫌だったところを見抜かれた先輩だ。
「ええ、宜しくね。 各部屋、四人部屋みたいよ。」
「あ、そうみたいですね。 他校の方はまだ来てないようですね。」
先輩と並んで階段を上がっていく。
2階の踊り場に来たとき、
「おい、田所! お前はこっちでも違和感ないかもな~」
数人でたむろっていた男子部の同級生が優樹に対していつものように冗談を言う。
「まぁな。もしかしたらお前より自分の方が他校の女子部員にモテるかもしれないぜ?」
優樹も巧くやり返す。
「あー、言いやがったな!まぁ、悔しいけどマジであり得るかも。 一応、俺の方が背が高いんだけどな~。」
「田所の涙黒子って色気があるんだよな。 女子はさ、それにヤられちゃうんだよ。」
隣にいた男子も話に加わる。
「お前も同姓にばかりモテて大変だよな。彼氏なんてできねーんじゃねぇ?」
ケタケタ笑いながら去っていく男子。
要らぬお世話だ。優樹は彼らの背中に舌を出し睨み付けた。
同級の男子は本当に下らない話ばかり大好きで困る。
巧くあしらって立ち去るのが無難だ。
優樹は涼子先輩と共に3階へと階段を上っていく。