たった一人の甘々王子さま
練習試合終了後、皆で順序良くシャワーを浴びる。
さすが私立の大学。設備が凄く綺麗!
運動部専用のシャワールーム、サウナまであるってねぇ..........
汗を流し、スッキリしたところで俊樹と合流。
結局、俊樹は試合が終わる前に体育館に顔を出せたのだった。
どれだけ教授の話が長かったのか良くわかる―――――
エミは先に俊樹と落ち合っていた。
俊に向ける笑顔はやっぱり色っぽい。頬がほんのり赤くなっている。同姓の優樹ですらキュンとなる可愛らしさだ。
「俊、エミ、お待たせ。」
「あぁ、優。お疲れサン。」
「優樹、お疲れさま~」
優樹が俊樹のそばに行くと――――
「わぁ!イケメンだ!!」
「イケメン兄弟!!」
「双子ですか?優樹先輩にそっくり!」
「一緒に写真撮ってほしーい!」
女子特有の声が上がる。
俊樹の事を知らない後輩たちの声だ。
優樹も俊樹もエミも、毎度のことながら笑いが止まらない。
「優樹の双子の弟、俊樹です。そして、エミの彼氏です。宜しく。」
はい、笑顔爽やか王子登場!
女子の扱いが慣れてる俊樹の横で、
「また俊樹ファンが増えちゃう......」
エミがポロリと本音を漏らす。
イケメン王子を捕まえたら、そんな悩みも出るだろう.....
「俺にはエミだけだよ。心配しないで。」
優樹には鳥肌ものの甘い台詞をエミの耳元に口を寄せてささやき、チュッと口付ける。
もちろん、エミは頬を赤く染める。
『俊樹は本当に王子だよな~』と、二人のすぐ後ろで再確認する優樹だった。
「あ、忘れてた!」
突然、俊樹が声を出す。
「優、父さんの所に行かないと――!」
「チッ、思い出したか......。忘れてていいのに。」
優樹の眉間に縦皺が出来る。
『エミのこと連れてきたのに......のろけてればいいのにさ......』
優樹が小声で文句をいう。
「優樹、何かあったの?」
エミが声をかける。
「今朝、優だけ父さんから呼び出しかかってね。エミも一緒に行くよ、会社に。」
俊樹がエミに今朝のことを伝える。
まさか、一緒に連れていかれるとは思ってもいなかったのか
「え?わたしも?」
と、驚く。
「俊、エミと行ってきてよ自分の代わりに。んで、婚約の話でも進めてこいよ―――」
だんだんご機嫌斜めの優樹。
目付きも悪くなっていく......
そんな優樹を無視して優樹とエミの荷物を持つ俊樹。たいした荷物でもないのだが、出来る男は気遣いが出来るというのかさりげない優しさが現れる。
「ほら優、いくぞ。駐車場はあっちだからついてこいよ。」
「......あぁ。」
そんな姿を見た先輩が心配そうな顔を向ける。
「優樹くん?急ぎの予定があるのかしら?飲み会はどうする?」
「先輩、すみません。実はこの後、父の会社に出向かなくてはいけなくて......ホントは行きたくないんですけどね......」
途中で抜けることを詫びようと頭を下げる。先輩には眉間の皺もなく普段通りの対応。
「あら、そうなの?では、優樹君とはここで解散にしましょうか?飲み会はまた次回ね。」
「すみません。お疲れさまでした。」
「はい、お疲れさまでした。」
先に歩いていった俊樹とエミの後ろ姿を見つめながら重い足取りでついていく。
「なんか、胃が痛くなってきたかも......」
体に拒否反応か出てしまったようだ。