たった一人の甘々王子さま


「取りあえず、智はもういいな?納得出来たか?」


浩太朗の問いかけに頷く。


「あぁ、今まで苦しめて悪かった。多分もう会うこともないだろう?まぁ、見かけたら会釈くらいはするかもな。じゃあ、元気でな。」


そう言って、智は立ち去っていった。
優樹は智の後ろ姿を見つめたまま何も言わない。
これで優樹のトラウマがなくなることを浩太朗は祈るばかり。
浩太朗はその場から動かない優樹に


「お疲れさん。よく頑張ったな。」


優しく頭を撫でながら労いの言葉を掛けた。
浩太朗は本当に優樹にとっていいお兄ちゃんだ。


「うん、ありがとな。」


優樹の心も少し軽くなった感じだ。
少し笑顔も伺える優樹に、


「さて、飯食って午後の練習も頑張りますか―――」


「よし、頑張ろー!」


浩太朗と優樹は気合いを入れ直した。




優樹は隣を歩く浩太朗を見上げた、
思わぬところで昔の傷を和らげることができた。


『俊とコータローに感謝だ。』


優樹が微笑む。
合宿から帰ったらすぐに浩司の事をぎゅーって抱き締めてあげよう。
こんな自分を好きになってくれてありがとうって、思いを込めて。



今日は、優樹の10年越しのトラウマが小さくなっていった記念日になりそうだ。


『俊とコータローにもお礼しないとな。』


なんて、思いを馳せる優樹だった。

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