たった一人の甘々王子さま

「仕方がありません、今日のところは此処までにしておきますか。」


なんて、支倉佳苗は上から発言。
自分の事は最小限の情報提供で、相手から根掘り葉掘り聞き出すとは。
何処にでも存在する女子だが、優樹の回りにはいないタイプ。
と言うか、いても優樹が相手にしていなかったと思うのだが........


「残念~。格好いい田所センセの彼氏サン、知りたかったなぁ~」


いやいや、そんなに知りなくないでしょう?他人の彼氏なんて。
しかも、今日知り合ったばかりですよ?
ツレとの話のネタにされるなんてゴメンだ!
優樹の中で笹木慎太郎と付き合う距離が線引きされた。


その後は他愛もない話で食事が終わり、


「さて、午後の授業も頑張りましょう!」


と、優樹も5限目にある体育の授業の準備をするべく二人と別れた。


残された二人は......


「ねえ、笹木センセイ。」


「ナニ?支倉センセ。」


「田所センセイって、男性的な雰囲気ですけど、結構女の子っぽい所ありそうですよね?」


「ん~そう?支倉センセは人間観察が好きなの?」


「......かも、しれません。ちょっとね、気になるんです。田所センセイのこと。何故なのか分かりませんけど、女の勘?」


「女の勘ねぇ~。田所センセを気にする時間があるなら、俺の事も気にして欲しいな。支倉センセなら、いつでもウエルカムですよ?」


「............。考えさせてください。」


そんなやり取りをしていた。


今後、この二人が優樹にどう関わっていくのか........は、まだわからない。



優樹の教育実習生活は始まったばかり。



午後の授業は2時間だけ。
女生徒に囲まれて、楽しい授業を進める事ができた。
まぁ、準備中はやっぱり恋バナで盛り上がるのだが。


「優樹センセって格好いいよね?」


「彼氏サンって?逆に可愛いの?」


「わたしね、センセイが恋人になってくれるなら今の彼氏と別れる。」


「優樹センセって大学どこ?私、そこ受験する!きっと、いい男に出会いそうな気がする!」


恐るべし、10代のパワー。
数年前は優樹も、高校生だったのに........
休み時間も、下校時間も生徒に囲まれて、
『早く本当の先生になりたい。』と、思う優樹だった。

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