たった一人の甘々王子さま
「泣いてないし。........浩司、否定しないってことは........やっぱ元カノなんだ......」
「優樹、聞いて。」
「ふん!」
抱き寄せた浩司の腕を払う。
そして部屋から出ていこうと立ち上がる。
「優樹!」
浩司が強く呼び止める。
暗示にでも掛かったみたいに優樹はドアの前で立ち竦む。
浩司も優樹の傍まで行き、ギュッと抱き締めて優しく話し出す。
「優樹?俺もさ、もう27だよ?付き合ったことのある女性だって居てもおかしくないと思わない?それに......俺さ、優樹に恋して4年目にして結ばれたんだよ?結構長い片想い経験してますよ?その間、浮気なし。優樹一筋。」
「うん......。」
「分かった?昔の恋はきちんと終わってるから。心配しないで。ね?」
「ん、信じる........」
頷いた優樹の頭を撫でて、こぼれ落ちた涙も拭い、チュッと、瞼にキスを落とす。
「さあ、明日も忙しいでしょ?かわいい生徒が待ってるんだし、そんな泣き顔でいいの?ほら、こっちおいで。」
浩司に促されてお風呂場へ向かう。
優樹も素直に頷く。
「はい、お風呂入っておいで?俺はもうひと仕事してくるから。ゆっくり浸かっておいで?」
棚からバスタオルを取りだし優樹に渡す。
そして、微笑んだ浩司がドアを出ていこうとしたとき、
「こ、浩司も。」
優樹が引き留める。
「浩司も入る。........ダメ?」
ヤキモチ妬いて、泣いた顔を赤くした優樹が俯きながら浩司のスーツを離さない。
女の子の仕草をこれでもかと出してくる優樹に浩司も堪らず溜め息が........
「フゥ........優樹、明日も忙しいでしょ?可愛いこと言うと、本当に襲うよ?そうしたら、明日の朝辛いのは優樹だよ?」
浩司が大袈裟に例えても、優樹は首を横に振る。
「入る、の.............ンッ!」
可愛く拗ねた優樹に浩司が『愛してるよ』ってキスをする。
優樹も精一杯受け止める。
『もう離さない』って思いを込めて。
大好きな浩司のキス。
ちょっとお酒の味がするキス。
優樹も浩司の舌を追いかけていく。
段々激しくなる。
「―――プハッ。」
「..........煽ったのは優樹だからね?泣いてもやめないよ?」
「ん......いいよ。やめさせ....ないもん....」
「........優樹、どこで覚えたの、そんな言葉。他の男に言っちゃダメだからね?」
お互いに着ているものを性急に脱がせあった。
脱がせた服は足元に投げるように。
浩司のスーツだけはハンガーにかけた。
「こんなときなのに、律儀だね。」
浩司は優樹の背中にキスをする。
「大事だもん。かけておかないと皺になっちゃうし。」
優樹は軽くスーツを叩いて皺を伸ばす。
そんな後ろ姿に浩司は欲情した。
「やっぱり、俺には優樹だけだよ。おいで、いっぱい愛してあげる。」
二人は、お風呂場で日付が変わるまで、これでもかっていうくらい求めて求められて、愛して愛されて..........何度も、果てた。
湯船に浸かる時はいつも抱き締めてもらう優樹。
幸せそうな顔をして浩司に寄りかかり、
「浩司、だーいすき。」
って、抱きついて囁くものだから浩司の理性は堪らない。
ふと視線が合うと、優樹は首を伸ばして浩司の唇に触れるだけのキスをする。
自分からした行動に頬を染め、照れ笑いすると浩司に抱きつく。
すると、優樹の可愛い胸の膨らみが浩司の胸に押し潰されて柔らかさが伝わる。
「優樹のヤキモチ、本当に可愛い。
はぁ、明日の仕事........ヤバイな。」
浩司は一人、小さく呟いた。