たった一人の甘々王子さま
「さて、浩司に電話するかな~」
スマホを手にしたとき
「優樹?」
不意に声をかけられて振り向く。
いつも聞いている心地よい声の持ち主。
そう、優樹に声をかけてくれた人は、
「浩司!」
優樹は嬉しくて駆け寄った。
「スーツだね?今まで仕事だったの?お疲れ様です。海外事業部のエースさん!」
ほろ酔い気分の優樹は浩司の前で敬礼した。
「そう、優樹のために頑張ってきましたよ。そして、酔っ払いさんを引き取りに来ました。さぁ優樹、帰ろう。」
「うん。帰る!」
浩司の出した左手を見つめて、ニコッと笑った優樹は、
「此方が良いの!」
と、浩司の左腕に抱きついた。
酔っ払った優樹もまた可愛いと思う浩司。
今日の飲み会のことを話ながら二人仲良く並んで歩き、タクシーを捕まえて乗り込む。
そんな二人の姿を見えなくなるまで見つめていた人物が居たのだ。
二人にとってこの人物は善なのか悪なのか......
今は、未だわからない。