愛されたがり。
赤信号で、ゆっくり車が止まった。
微笑を浮かべた広瀬くんの大きな手が、優しく私の髪と頬を撫でた。
お酒が入って、いつもと違う男の顔を見せるこの広瀬くんの表情が、私は堪らなく好き。
程なくして車が私の住むマンションの前に止まった。
ギュッと、引き締まった広瀬くんの細い体を抱き締めて車から降りる。
「今日はありがとう。食事も美味しかったし、楽しかった」
「こちらこそありがとうございます。また連絡します」
「うん」
少し寂しげな瞳の広瀬くんに、胸がキュンとした。
けれど、ここで流されて家に入れる気はない。
だって、入れてしまえばきっと過ちが起こってしまうと思うから。
手を振ってさようならをする。
…寂しいなあ。
広瀬くん、貴方と同じよ。
私も同じ気持ちなの。
白い車を見送って、マンションの自分の部屋に入った。