泣いてもいいよ。
「あんまり気にしない方がいいよぉ」
背中をバンバンと叩かれた。
そういや、今日はクリスマスイブ。
「なにが」
「だってさぁ、遥ったら悩み過ぎなんだもん。楠本が死んでもう4ヶ月だよ?」
「……そうだけど」
大好きで、大好きでたまらなかった人が死ぬなんて。考えてもみなかった。
美羽がどうしてそんなに明るくいられるのかがよく分からない。楠本くんが死んでから、休み時間に廊下に出てワイワイする子は格段に減った。
みんなやっぱり騒ぐことに後ろめたさがあるんだ。
「遥……そんっなに好きだったの?」
なんか、美羽の言い方に腹が立った。
「そんなに落ち込むって、かなりだね」
私は……どうなんだろ。もし楠本くんが好きじゃなかったら、『へぇ、二組のコ、死んだんだ』で終わってただろうか。いや、例えしゃべったことがないくらいでも、美羽みたいに明るくは振る舞えない。
でも好きだった。
「美羽はどうなの?」
「へ?」
「お、お、が、き、くん。好きなんでしょ?」
美羽の顔が真っ赤になる。はいはい。
「な、なんで知って……」
「なんでもいいでしょー。顔みてりゃ分かるよー」
でも、今は大垣くんはそっとしてあげるべき。もし告白なんかしちゃったら、叶う恋も叶わないからね。
「おのはる」
大垣くんだ。なんてタイミング。
「なに?」
「ちょっと、話したいことがあるんだ。悪りぃ鮎川。おのはる借りる」
美羽の表情は、死んでいた。
「……いーよ」
ただの話だからそんな顔しないで。発展なんてないんだから。
発展なんて……。
「付き合ってほしい」
ないんだから。
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