泣いてもいいよ。
昼休み。お弁当を食べている時だった。
真顔で、しかも今思いついたように言った美羽を見てそう思った。
「……どういうこと?」
「どういうことって、そういうこと。二組の楠本が昨日の夜中に死んだってさ」
これは嘘ではない。だって、楠本くんの親友である大垣くんの目が、腫れていたから……。
「ふうん。かわいそうだね……」
とだけ言った。
下を向いてまたお弁当を食べ始めたけど、鼻がツーンとして、どんどん目に涙が溜まってきた。
霞む視界。
目が痛くなって瞬きした時、両目から涙が落ちた。
「……遥?」
一度流れると、止めどない。私は下を向いたまま必死でご飯をかきこんだ。
「もしかして泣いてる?」
泣いてない。
泣いてないよ……。
「まさか楠本が好きだったとか?」
力が抜けた。箸が机に落ちて、カラカラと転がった。
「優しかったもんねぇ。まぁ……仕方ないよ。交通事故だったんだから」
「……そうだね」
< 2 / 18 >

この作品をシェア

pagetop