泣いてもいいよ。
川の堤防を歩き、橋を渡り、工場前を歩いた。
「……なんで無言なの?」
「喋ることが……ねぇから?」
「ふうん……」
また沈黙が生まれた。
「おぉい!なにやってんだぁーっ!」
工場の中から、機械音と共におじさんの声が聞こえた。
左を歩く大垣くんを横目でみると、じっと前を見つめていた。多分、楠本くんのことを考えてるんだと思う。
工業団地を抜けると、道を挟んで図書館があった。
すると、横断歩道の前で大垣くんが立ち止まった。
「俺……まだあの日のショックが忘れられない」
「え?」
大垣くんは今にも泣き出しそうな顔で話始めた。
「俺はあの日、実力テストが近かったから図書館で勉強しようって康太を誘った。で、お昼に自転車で図書館へ向かってたんだ」
あの日。
大垣くんは楠本くんといたんだ……。
「この横断歩道を、俺は信号が赤のまま渡った。早く行きたかったし、まず車がほとんど通ってなかったんだ。でも、康太は真面目だから渡らなかった。危ないからって。ほんと、康太らしいよな」
頷いた。
楠本くんが危ないからと笑って言う姿が目に浮かぶ。
「でもな……。信号が青になって……康太が渡り始めた時だった」

軽トラックが突然突っ込んできたんだ……
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