病愛。【完】
「やめてよ…!!なんでそんなことするの?!」




私は必死になってさけんだ。





「あいつが邪魔だから。それだけだぜ?」




恭平はそう言って笑う。



なんて不気味な笑みだろう。




恭平は立ち上がると私に背を向けた。




私はその背に向かってもう一度さけんだ。




「最低!!最低だよ!!恭平!!」







すると恭平はこちらを振り返った。




「俺はお前のためを思ってやってるんだ。何も最低じゃないぜ?」




そう…自信に満ちた顔で言うんだ。




恭平は気づいてない。




自分がどれだけおかしいのか…




恭平はまた私に背を向け、歩き出した。





「待って!!恭平!!颯だけは…!!颯だけはっ…!!」





鎖のせいで身動きがとれず、去っていく恭平の背中だけが遠くなるばかりだった。




そして、ついに…




「あ…ああっ…」




恭平の姿は見えなくなった。





「私は、なんでいつもどうすることもできないの…?」




誰よりも人を傷つけたくないって。




そう思ってるはずなのに…




いつもいつも、私は何もできない。



誰も助けることができない。




私は小さい。



私は弱い。




「颯っ…ごめんっ…颯…」




私は何度も颯の名前を言い謝り続けた。




私が弱いばっかりに…




颯の命がなくなってしまうかもしれない。




そう思うと胸が張り裂けそうになった。
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