病愛。【完】
颯side






伊藤は必死に俺や真をかばおうとしてくれている。





自分を犠牲にできる奴なんだ。





そんな強さ、もう伊藤にはいらないのに。






なんでそんな偽りの笑顔を見せる?







助けてやりたい。





伊藤を…あのせまい世界から救い出してやりたい。






俺にはそれができるチャンスがまだあるんだから。








俺は…!!





俺はすぐさま伊藤の後を追いかけた。







だが…遅かった。






もう伊藤は恭平と部屋に入った後だった。






「くそっ…!!」






俺はドアの前まで来てくやしがった。






すると…隣の部屋のドアが開いた。





「颯さん?」





「真…」





「もしかして…中に綾香と恭平が…?」






俺はうなずくと真はドアに耳を当てた。







「やばい…!!」





一言そう言うとドアをたたきながら






「綾香!!」





伊藤の名前をさけびはじめた。






俺もそっとドアに耳を当ててみる。







「消しちゃおうか…あいつら。」





恭平の声が聞こえる。





「やめてっ!!」





伊藤の声も。







俺はこの時…本当に何もできなかったのだろうか。










「じゃあ俺のものになれよ?」





恭平がそう言ったとき、






「わかった…わかったから…」






伊藤がこう言わずに済むように…






俺は…何ができただろうか。
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