病愛。【完】
「こら。二人でどこに行ってたんですか?」




「…すみません。」






「…早く席につきなさい。」





「…すみません。」






「先生の話、ちゃんと聞いてますか?」






「…すみません。」






先生がため息をつく。






「綾香…」





成美が心配そうにこちらを見つめる。





私はそんな成美の声すら耳に入らなかった。





何も考えられない。





私の頭は真っ白だった。







隣にいた颯は







「すみません。授業はちゃんと受けます。」






そう言い私を席まで連れて行ってくれた。






とは言っても隣同士なのだが。






一時間目の社会の授業は全く耳に入らなかった。






教科書も開けてない状態。






ただ…さっきの映像ばかりが頭に浮かぶ。






…私は首筋をさわってみた。






まだ残ってる、颯の舌のぬくもり。






そして…




まだ残る、キスマークをつけられた時の痛み。






私は颯と…友達の一線を越えてしまったんだ。







私は颯を盗み見た。





冷静になって授業を受けている颯。






やっぱり颯はメンタルが強い。







それにくらべて私は…





私は息をつくと黒板に書いてあることを丸々ノートに写した。
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