病愛。【完】
放課後。





「綾香。帰ろう。」




「…うん。」





私は横にいた颯を見た。





「じゃあな。」





「…バイバイ。」






私は成美へと靴箱へ行く。






成美は私を気遣ってか颯のことを何も聞いてこなかった。






こうして校舎を出たのだが…






私は校門へ行くまでの道でいきなり立ち止まってしまった。







「綾香?」





成美は不思議そうに私を見つめる。






「どうしたの?綾香?」





私は前を見たまま固まっていた。





校門に…男が一人立っていた。






あの自信に満ちた、通った女の子みんなにふり向かれる整った顔。







恭平。




あれは絶対に恭平。






私は首筋をさわった。





この痕を恭平に見られたら…?






背筋が凍った。






何されるかわかったもんじゃない。






きっと…私が考えられないようなことをするのだろう。







私は意を決した。





首筋のところはなるべく気づかれないように…制服の襟でかくした。






「バイバイ。成美。」





私はそう言うと校門にいる恭平の元へと向かった。






「恭平。」






私が声をかけると恭平は





「俺を待たせるなんてな…帰ったらお仕置き決定だな。」






そう言い私の肩をつかむ私。





そして抱き寄せられる。





「じゃあ帰るか。」





「…うん。」





お仕置きなんて言葉にはもうびくつかなくなった。





ただ…キスされるだけだし。







でも…きっとあの痕が見つかったら、お仕置きなんかじゃ済まない。






きっと地獄が待ってるのだろう。
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