病愛。【完】
恭平の顔は険しい。





怒っているんだ。





「…綾香。もう一度聞く。誰にこんな痕をつけられた…?」






私は口を開かない。





ずっと恭平の目を見ているだけ。






「答えろよ…綾香!!」





いつも余裕な笑みを浮かべている恭平だが…






今は全然余裕がない…






あせっているような…そんな感じだった。







「どうして答えてくれないんだよ?」





「…」





「俺は彼氏だろ?!」






私はその言葉を聞いた瞬間、何かがおかしくなった。






「彼氏だからってなんでも言えるってわけじゃない!!」






と恭平を挑発するような言葉を言ってしまったのだ。






「…綾香の彼氏ってのはそんな小さな存在?」






恭平の目がまた変わった。





その目は…真や颯に向けた目と同じ。





狂ったような…目。





そして…






「じゃあもう動かないように…本当に俺のものだけにしなきゃね…?」






あの暗くて低い声。





私の中の危険信号が狂ったように鳴り響く。








動かないようにって何?





俺のものって何?





恭平は机の上のペン立てに置いてあったカッターナイフを取り出した。






「いや…恭平!!」





「綾香は…俺の…俺だけのものになるんだ…」






恭平は目をかっ開きながら私にカッターナイフを持ったまま近づいてくる。






「いやっ…やだ…」





「大丈夫。俺のコレクションになるだけだから…」






コレクションって何?





私は…どうなっちゃうの…?





私は必死になって逃げた。






小さな部屋を駆け回る私。






「一緒のベッドで寝かせてあげる。それならいいだろ?」






そんなの嫌に決まってる。





それじゃあただの人形…









人形?





そうか。恭平は私を自分だけの人形にするつもりなんだ。






私の命を奪って…







…嫌だ。






そんなの絶対に嫌だよ!!







お願い…誰か…







「助けて…っ!!」
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