病愛。【完】
颯side





「…綾香?」





恭平の家に来た時、突然真がつぶやいた。





「どうした?真?」





俺が聞くと真は





「綾香…綾香の声がする…!!」





俺は首をかしげた。





そんなの何も聞こえてこない。





でも…きっと姉弟だからだろう。





俺には聞こえない姉の声が弟の真には聞こえるんだ。






「中にいるのか?」




「そうみたいだ…」





真はハッとするといきなり玄関のドアをたたき始めた。





「恭平!!いるんだろ?!出て来いよ!!」





何度もドアをたたく真。






俺も一緒になってドアをたたいて声を出した。





「恭平!!伊藤を返せよ!!」





すると…かすかにドアの向こうから聞こえた声。






「助けて…!!」




「綾香?!」





「オイ!!開けろよっ!!」







伊藤が人に助けを求めるなんてそうそうない。





プライドが許せないのだといつも言っていた。





でも…そんな伊藤が助けを求めている…






俺は脳裏に言葉が浮かんだ。







「助けてやらなくちゃ」






俺の目が変わった。





「颯…?」





「真。ちょっと離れてろ。」






俺は真を離れさせた。





そして…





バキッ!!





ドアが壊れた音がした。





「行くぞ。」





「はい!!」






そして俺らは恭平の家の中へと入っていった。






愛する伊藤を救うために…
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