病愛。【完】
お願い。誰か…助けて…




私は何度も心の中でつぶやいた。




私…死んじゃう…?




そんなの絶対嫌だよ…!!




私は極限の状況に立たされて必死に耐えていた。





…すると。








「伊藤!!」




「綾香!!」






部屋に二人の男が入ってきた。





颯と真…!!





私は二人を見て安心して力が抜けそうになった。





「お前ら…ここに来たってことはわかってるだろうな…?」






恭平がカッターナイフを二人に向けた。




私は目を見開いてまた気を引き締め、





「恭平!!もうやめてっ!!」





と恭平に向かってさけんだ。





でも…今の恭平の耳には届かない。






「やめて…お願い。恭平…」





「うるせぇ。お前が俺以外の野郎に…痕をつけられたのが原因だろ…?」







恭平は私をにらむ。







「…そんなことで?」





颯が恭平を挑発するように言う。





「はぁ?」






「そんなことで綾香を追い詰めたのかって聞いてんだよ!!」






颯は恭平を壁にたたきつけた。





恭平はカッターナイフを持ったままなのに…





「颯!!」





悲鳴に近い声を上げる私。





「そんなことで伊藤に恐怖心を抱かせるなんて…」





すると颯は恭平の耳元で






「彼氏失格だな。」






なんて呟くと私の元へ戻ってきた。





恭平はなんだか魂が抜けたように壁にもたれかかったまま。





「颯…」




「帰ろうぜ。」





きびすを返す颯。










「綾香。」





恭平が私を呼ぶ。




私が振り返ると恭平は





「俺、綾香のことが好きすぎて…どうしようもないんだ…」





さっきと違う小さく頼りない声で言う恭平。






「好きすぎて…あんな行動をとってしまう。俺は…」





反省してるんだ…恭平も。





私は恭平に近づくとそっと抱きしめて





「平気だから。安心して。」





とつぶやいた。





まさかこれがまた悲劇の元凶になるなんて思わなかった。
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