病愛。【完】
しかしそんな時間は意外と短かった。





「やめてよっ!!」




私は颯を突き飛ばした。





私は口を覆いながら





「もう…やめてよ…」




消え入りそうな声で言う私。





「…」





颯は黙ったまま。





「ちょっと颯…」





そう言いかけた時、温かいぬくもりが私を包んだ。





「颯…?」





「苦しいんだろ?悩んでるんだろ?」






颯は口を開いて私に問いかけ始める。





「颯…」




「俺が原因なら謝る。本当にごめん。」





颯は謝ってくれた。





「でも…俺はもうおさえきれないほど…伊藤が好きなんだよ。」





颯の気持ちが痛いほど伝わってきた。





「颯…」





私はされるがまま、言われるがままだった。










同時刻。






教室の外で…






「…颯。…綾香。」





誰にも聞こえない声で二人の名前をつぶやく成美。





その横顔は…少し切なく…






なんだか思いつめた、悲しげな顔だった。






また一つの歯車が回りだそうとしていることを、まだ誰も知るよしもなかった。
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