病愛。【完】
廊下がざわついてきた。




颯はそっと抱きしめる力を緩めた。





私はやっと颯の腕から抜け出すことができたのだった。





そして…クラスメイトたちが教室に入ってきた。





その中には成美の姿もあった。





私は逃げるように席を立つと成美の元へ向かった。






「おはよ。成美。」





「おはよー。綾香。」





いつものように笑顔であいさつしてくれる成美。








___私を支えてくれる温かい心を持つ成美。





そんな成美はずっと私の側にいて…大の仲良しだった。





だから私は成美のことで知らないことはないし…






もちろん、成美も私のことで知らないことはないだろう。





そして成美は…私が少しでも何かおかしいと気づいてしまう。






すごく不安だった。





今も私はちゃんといつもの笑顔を作れてるだろうか。





いつもの対応をしているだろうかと。





でも…





「そうだ。今日は一緒に帰れそう?」





「うん!!もちろん!!この前はごめんね?」





「全然大丈夫だよ。」





…普通の会話。





成美は私に不信感は抱いてないようだった。





ホッとした。





「恭平とはどう?」




「それがさ…」





成美が恭平のことを聞いてきたので私は昨日の出来事をすべて話した。





「そんなことが…?」





「うん…」





成美は私の話を聞いてびっくりしたようだったが…





しばらくして私を真っ直ぐ見つめると






「何かあったら颯に助けを求めなよ?」





と言い出すので私は首をかしげた。





なんで颯…?






「颯はきっと綾香のためならすぐに駆けつけるから。」





そう言い微笑む成美。





でもその笑顔はいつもの成美の笑顔じゃなかった。





どこか悲しそうな…そんな笑顔。














私はこの時から少しずつ気づき始めていたんだ。





成美の変化に。





でもどうしてちゃんと声をかけてあげなかったんだろう。





それだけを…後から後悔することになってしまう。
< 47 / 117 >

この作品をシェア

pagetop