病愛。【完】
颯side





俺は伊藤と別れると成美と共に屋上へ向かった。




異様に静かな成美。




いつもは明るく話しかけてくるのに…





考えてみれば今日の成美は元気がない気がする。





「成美…?」





「何?」





…あれ?いつも通りの成美だ。









そうしているうちに屋上に着いた。





しばらく待っていたのだが伊藤はこなかった。





「ちょっと俺、伊藤を迎えに…」





俺は伊藤を探しに行こうとおろしていた腰を上げようとしたときだった。





腕をつかまれたのだ。





…成美に。





「成美…?」





「…行かないで。」





「え?なんで…」





「綾香のところに行かないでっ!!」





いきなりさけぶ成美。





一体どうしたというのだろう。





「おい。成美…」





「わがままなのはわかってる。」





成美は俺のうでをつかむ力を一層に強める。






「ねぇ…私じゃダメなの…?」






また口を開く成美。





「おい…どうしたんだよ…成美…」





「綾香じゃなきゃダメなの?やっぱり私じゃ…」





「成美!!何言ってるんだよ!!」





「だってずるいよっいつも綾香ばっかり!!私にだって何か譲ってくれたっていいじゃない…」





成美の中の何かが爆発したんだ。




俺にはそう感じられた。





こんな状態の成美を置いて伊藤の元へなんて行けるわけがなかった。
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