病愛。【完】
成美side




私が颯を問い詰めていた時だった。





綾香の声と真の声が聞こえたのは。





「真!!逃げて!!」





そう言う綾香の声と…





「綾香!!逃げろ!!」





という真の声。







何かあったの…?




私はハッとして颯を見た。




颯は明らかにさっきの颯と違った。





私の手を無理やり振り払うと屋上を出て行った。





「なんで…!!」





私はそんなことを言いながら颯を追いかけた。





下へ行くと綾香が…窓に身を乗り出していた。





さけびながら…ずっと。





そして…颯が綾香を一生懸命体を引っ張っている。





颯の真剣な顔。











「あきらめたらいいのに。」





私は一人でつぶやいた。





いつからだろう。




大好きで大事だった綾香にこんな感情を抱き始めたのは。





いつからだろう。




こんなにも綾香が邪魔だと思い始めたのは。





私はじゃじゃ馬にまぎれて窓の外を見た。






そこにはあの狂ったいとこと…真がいた。





あのいとこも、綾香のことが好きなのよね…





そんなことを思っていると綾香は我に返ったのか即座に逃げ始めた。





そんな綾香の様子を横目で見ながら私はふと思った。






私…もしかしたらあの異常ないとこと気が合うかも…






私はニヤリと笑った。





そうだ。私があのいとこと仲間になればいいんだ。





そして…綾香を颯から引き離す。





それが私の願い。





そして…あのいとこにとっての願いでもあるから。
< 54 / 117 >

この作品をシェア

pagetop