病愛。【完】
私は恭平の異変にすぐに気が付いた。





「恭平…?」




恭平の私を見る目がおかしい。






「恭平…どうしたの…?」




「綾香。」





恭平は静かに私の名前を呼ぶと私を力いっぱい抱きしめた。





「恭平…?」




「もうどこにも行くなよ…」




恭平は私の耳元でささやく。





「綾香は俺の…俺だけの綾香だろ…?」





おかしい。




私はそう瞬時に察すことができた。





恭平は私の腕をさわる。





「この華奢な細い手も、この艶やかな肌も…」





恭平は手を腕から私の頬へとすべらせる。





「綾香は全部俺のものだ。」





背筋が凍った。






『俺の所有物』








そう言われているみたいで…恐い。






「大好きだ。綾香。好きで…好きで…仕方ない。」





私の唇にキスを落とす恭平。




「恭平…!」





恭平は私の唇に手を添える。




「俺の綾香。俺だけの…綾香。」





何度もつぶやく恭平。




見えない鎖でつながれているようだった。




凍り付いてしまって…身動きが全くとれない。








「さ。行くぞ?」




「え?どこに…」





「もう…二度と綾香が男に近づかないように。」





恭平はニヤリと笑った。




そして聞こえるか聞こえないかのような小さな声で言うのだ。
















「閉じ込めてやる。」


…なんて。
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