病愛。【完】
陽が暮れてきた。




部屋に差す明かりがなくなってきている。




もうすぐここは…真っ暗になる。





鎖を切るのはやっぱりできなかった。




窓から逃げようとしても距離が遠すぎる。





それに私は柱から動けないので動くことすらままならないのだ。




そして…ドア。




固く閉ざされているドアは開かれることはない。







そんな時だった。





ガシャッ…





突然ドアの向こうで音がした。






これは…




「鎖の音…?」




私を縛る鎖と同じ音だった。




そしてしばらくして、ドアからまぶしい光が差し込んだ。




目の前にいるのは…





「恭平…」




「起きてたのか。綾香。」




そう言い微笑む恭平。




その顔を見るだけでぞくっとする。




「ねぇ。これは一体どういうことなの…?」




私が聞くと恭平は笑って




「どういうことって見ての通りだけど?」




と言う。




恭平は…今までの中で今が一番恐い。




「ねぇ。もうやめてよ…この部屋から出して。」





「せっかく手に入れた物を手放すわけないだろ?」




物…?



私は恭平にとって物なの…?





「いい加減にして。私は物なんかじゃない!!」




「わめくな。」




恭平はそう言い私のあごをつかむ。




そして上に上げさせる。





「お前はずっとここで…俺に飼われてればいいんだよ。」





恭平はそう言うと私に背を向けた。





「親への連絡と学校のことは俺がしといてやる。安心しろ。」





そう言いまたドアを閉めて…





私は真っ暗な部屋に取り残された。
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