あなただから
「これを……神田先輩に渡してほしいんです!!」
勇気を振り絞って言った言葉だろう。
ギュッと瞑られた目や彼女の様子から、それがよく分かる。
何故か、心が揺らぐ。
「神田君に?」
「はい……神谷先輩は、神田先輩の――」
次に来るであろう言葉が予想できた。
だから私は、
「それ以上言わないで」
と、彼女の言葉を遮った。
「えっ?」という表情を浮かべているが、私はあえてそれを無視する。
理由は、言わない。
「それは私に頼むよりも、久山君に頼んだ方が良いわよ」
「久山先輩って、バスケ部のキャプテンの人……ですか?」
「うん、そうよ」
折角勇気を振り絞って言ってくれたけれど。
そう付け加え、私は苦笑を浮かべた。
彼女にとって、久山君に頼む方が良いのを分かっているからこそだ。