家の前で倒れている男に餌付けしてみた結果(仮)
〈巳波八尋side〉
ゆずが家を出た後、玄関を見つめる。
行っちゃったか…。
何だか名残り惜しい。
でも、ゆずが撫でた俺の頭にはまだゆずの温かさが残っていて、思わず頬を緩めた。
…ゆずが俺に言った『猫みたい』という言葉が今だ頭の中でリピートしている。
猫みたい…か。
初めて言われた。
でも、俺が猫ならゆずは
__飼い主?
「それなら、悪くないかも知れない…」
意外とこの生活も悪くないかもな、なんて自分らしくも無いことを思いながら、いちごミルクを飲む。
一息ついた所で、スボンのポケットの中の端末が振動していることに気がついた。
端末の液晶画面を見ると滝川未玖〈Takigawa miku〉と映し出されている。
メールならまだ良いとしても、生憎それは電話で
「…何?」
渋々出る事にした。