家の前で倒れている男に餌付けしてみた結果(仮)


『…八尋?』


馬鹿なのか俺の携帯にかけて来たくせに俺かどうか確認してくる。


「そうだけど、で?」


早く用件言えばいいのに。


おどおど、うじうじ中々言おうとしない。


…ゆずと正反対だ。


「用件が無いなら…切る」


『ま、待って!』


切ろうとすると、慌てたように引き止める。


あぁ、イライラする。


気が付けば、いちごミルクのパックの中は空で、軽く舌打ちをした。


『皆も、あたしも…八尋に戻って来て欲しいって思ってるんだよ!?』


キンキンと甲高い声が頭に響く。


戻って来て欲しい…?


彼奴らはただ、俺に戻って来て欲しいんじゃなくて、“地位”を失いたくないだけ。


…それに


「帰る場所…出来たから」


『…えっ』


出来たと言っても、また変わることになるかもしれないけど一時的に帰る場所は出来た。


だから


「…ばいばい」


戻らない。


side.END

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